被災地をこの目で見て、私はテレビ画面からは伝わってこなかった本当の惨状と現地の人たちの悲しみ、辛さを知りました。

「自分は被災地の方々にこれから先、何をしていけるのだろうか?」

 真剣に考えたとき、「野球で子どもたちを笑顔にしてあげるのが自分の使命だ」と結論づけました。

子どものケガを減らすため
大学院でスポーツ医学を専攻

 子どもたちの「野球をやりたい」という思いを、私が率先して応援していこう。そのほうが現役でがんばるよりも価値がある。心を決めた私は、同年11月に引退会見を行うことになったのです。

 それ以前から私は、野球少年たちのボールの投げすぎによる「野球肘」などの故障をどうやったら防げるのか、またその予防となるトレーニングに強い関心がありました。

 そこで、50歳で筑波大学大学院に入学してスポーツ医学を学び始めました。2020年に人間総合科学研究科(博士前期課程)体育学専攻を修了し、現在も同大学院のスポーツ医学学位プログラムを専攻しています。

 子どもたちの障害を減らしたいという一心で大学院で勉強を続けていますが、今後も野球教室などを行いつつ、子どもたちに肩肘のケガ予防を呼びかけ、さらにスポーツ医学の研究を続けていく予定です。

 野球が大好きなのに、ケガや故障がもとでボールが投げられず、プレーできないという子どもがたくさんいます。

 そんな子どもたちにケガを治して夢を持ってもらうために、また、ひとりでも多くの子どもたちにケガをせず、夢を追い続けてもらうために、これからも私は自分のできることをやっていくだけだと思っています。