生成AIの時代を生き抜くために必要な力

 本書を読んで考えさせられたのは、生成AIが仕事と生活にますます浸透するなかで、われわれが学習能力の根本を喪失するリスクに直面しているということだ。著者は学習におけるAIの効用や限界について直接的には議論をしていない。しかし、こう言っている。

 私は、対人スキルを磨くこととアクティブ・ラーナーであることは分かちがたいものだと考えている。アイデアに対して好奇心を抱き、心を開き、価値を見出すことは、人間に対して好奇心を抱き、心を開き、価値を見出すことである。それはお互いを信頼し、相手の前向きな意図を信じることだ。

 言うまでもなく生成AIは便利な道具であり、使いこなすスキルは必須だ。しかし、その一方で、AIには現場・現実・現物が存在しない。あまりに便利なツールであるために、一次情報に触れる機会が少なくなる。人に対する信頼や対人スキルも必要なくなる。

 生成AIに何かを打ち込むと、すぐに答えが返ってきて、それに対して即座にまた質問を打ち込むというルーティンが定着すると、日々の学習それ自体の価値や意義が希薄になる。心を休ませ深く考える静かな時間も失われる。要するに生成AIには、本書が強調しているアクティブ・ラーナーの能力を減衰させ、逆にパッシブ・ラーナーを量産するという面がある。

 これからの生成AIの時代にあって、学習能力の本質についての理解はますます重要になっている。本書はいまこそ読む価値がある。

(この記事は『Learning 知性あるリーダーは学び続ける』をもとに、一部抜粋・編集し作成しました。)