それはつまり、よくある「言葉を言い換えましょう」「言霊(ことだま)を大事に、良い言葉を口にしましょう」だけでは、「トゲは抜けない」ということなのです。

 だからいまからほんの少しだけ、いつもより“言葉”に敏感になってみて欲しいのです。それによって自分に刺さっている“言葉のトゲ”を見つけることができるようになります。

「ちゃんと」ってなんだろう?

「ちゃんとしなくちゃと思うたびになんだか息が詰まるんです」

 ケイコさんが話を切り出してくれました。

 ため息をつきながら、「ちゃんとできない私ってダメなんです」と。

 これまでも、夫婦や子育てのこと、仕事のことなど、時々相談にいらしていたケイコさん。いままでいろいろお話しする中で、彼女は、母としても妻としてもむしろ「ちゃんとしすぎ」「がんばりすぎ」なんじゃないかと感じることが多々ありました。

「ケイコさん、ちゃんとできないって、何がちゃんとできていないの?」

 そう聞く私に、

「仕事から帰ってくると疲れちゃってて、横になりたくなるんです。でも、家族の食事をちゃんと作らなくちゃと思うと憂鬱(ゆううつ)になって……。夜はもう食事の片づけをして、持ち帰った仕事をやって、気づいたら深夜。今日もちゃんと部屋の片づけができなかったと思いながら寝るんですけど。朝は家族のお弁当作りもしなくちゃで、上の子が早朝に家を出るので朝5時には起きないと間に合わなくて。そのまま家族にごはん食べさせて、自分の出勤の用意して……家のことが何もできないまま一日が終わる感じなんです。SNSを見ると世間の人はもっとちゃんとしていて、とても楽しそうなのに。そう思えば思うほどちゃんとできていない自分が情けなくなってきて……」

 ここまで一気にしゃべって、またケイコさんはため息をつきました。