ペプシコーラ、ケンタッキーフライドチキン、ピザハットを次々と再建し、「フォーチュン」や「ハーバード・ビジネス・レビュー」が選ぶ世界トップリーダーである伝説のCEOデヴィッド・ノヴァクが、成功者100人から得た知見を『Learning 知性あるリーダーは学び続ける』にまとめている。本記事では、一橋大学特任教授で経営学者の楠木建さんが執筆した監訳者まえがきの一部を特別に公開する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

学習し続けることの重要性
周囲の人々から著者が集めたエピソードにも興味深いものが数多くある。
アメリカ中西部の小さな町の出身で、フォーチュン誌で働くためにニューヨークに移住したキャロル・ルーミス。
彼女がキャリアをスタートさせた1950年代は、女性がジャーナリズムでチャンスをつかむのは容易ではなかった。フォーチュン誌にしても、男が記事を書き、女がそれを手伝うという分業が定着していた。
こうした男性優位の職場で働くことは女性にとって大きなハンディになる。キャロルはすぐに記者になることはできず、サポート役のリサーチャーとして雇われていた。
しかし彼女は脇役の仕事に多大な情熱を注いだ。先輩の記者と一緒に全米を飛び回り、インタビューに同席した。これがまたとない学びの経験になった。
焦らなかった理由とは?
フォーチュン誌で働き始めて8年後、ついに彼女はライターとして記事を書く機会を得た。彼女はその間に焦ることはなかったと言う。
なぜか。
「自分は学んでいる」という実感を持てていたからだ。
キャロルは60年間フォーチュン誌で仕事をした。企業財務の専門家となった彼女は、「フォーチュン500」のリストの作成を監督し、ウォーレン・バフェットが毎年株主に向けて送る手紙の編集者を長年勤めている。
「ゆっくり学ぶこと」の計り知れない価値
このエピソードは見落とされがちな学習の効用を物語っている。人は成功のための手段として学ぼうとする。それは間違いではない。
しかし、世の中はなかなか思い通りにはならない。実際に成果が出るまでには時間がかかる。いわゆる「下積み」だ。この時期をどうやって乗り切るか。その答えは学習する姿勢にある。
どんな状況に置かれても学習は毎日できる。
学習し続けることに価値と意義を見出すアクティブ・ラーナーは、成果を焦ることなく、着実に目の前の仕事に取り組める。
学習する姿勢は日々の仕事を建設的かつ精神的にも健康なものにするための最上の解決策にもなる――キャロルのエピソードはゆっくり学ぶことの価値を教えてくれる。
(この記事は『Learning 知性あるリーダーは学び続ける』をもとに、一部抜粋・編集し作成しました。)