第8位 nation(15回)
共起語:world(28回)、countries(10回)、sovereignty(4回)
スピーチ開始25分ごろ、国連演説ではこれまた異例となる「主権」を強調し始めます。例えば以下の一文。
“We respect the right of every nation to pursue its own sovereignty.”
(我々は各国が自らの主権を追求する権利を尊重する。)
通常の国連演説では「democracy(民主主義)」「alliance(同盟)」「human rights(人権)」が強調されます。ところがトランプ氏はこれらの言葉をほとんど使わず、代わりに「sovereignty(主権)」と「nation(国家)」を強調しました。これも、「国連=多国間協調の場」にあえて逆行する言葉選びです。
トランプが語らなかった国連演説「定番ワード」は?
さて、先ほども少し言及しましたが、これまで国連演説で繰り返されてきた以下の言葉は、ほとんど登場しませんでした。
democracy(民主主義)
alliance / partnership(同盟・協力)
climate / environment(気候・環境)
human rights / refugees(人権・難民)
multilateral(多国間主義)
トランプ演説の本質は、「何を語ったか」以上に「何を語らなかったか」にありそうです。上記のような普遍的価値を語るよりも、米国そして自身の価値に終始しました。
頻出単語ランキングと共起語の分析から導かれるのは、トランプ氏の演説が徹底して「米国ファースト」を強調しつつ、国連演説の定番ワードを排除したという事実です。国家を世界と対比させ、戦争を終わらせたと語り、国境を脅威として描き、経済を誇り、バイデン政権と比較し、そして多国間主義ではなく主権を掲げる――全てが「MAGA」(Make America Great Again)思想を映し出していました。
どんな詭弁/雄弁なスピーチも、どの単語を繰り返し、どの単語を避けたか、両面を読み解くことで真意に迫ることは可能でしょう。外交や国際政治に限らず、ビジネスでも欠かせない視点になるはずです。
