BYDやヒョンデの自動車が日本で売れないのは……

 以下、炎上上等で率直に書いていこう。

 中国ブランド、韓国ブランド――そのラベルが貼られた瞬間に、同じ性能、あるいは同じ品質でも、心のどこかにチクリとわずかな抵抗が生まれてしまう。理由を理屈で説明できない、何とも形容しがたい抵抗感。ここに触れずして、BYDもヒョンデも語ることはできまい。

 抵抗感の正体は、「無意識の差別意識」に他あるまい。

 歴史的背景や安全保障、報道環境、ネット上の反復的な揶揄(やゆ)が下地になり、「同じ性能・同じ品質でも“中韓ラベルは一段下”」という暗黙の序列を、いつの間にか内面化しているのではないか。スペックに現れない“見え方”。つまり「どこの国のブランドか」という記号が、特にクルマのような“特別な持ち物”に関しては、所有の物語にうっすら不安の曇(くも)りをかけてしまうのではあるまいか。

 曇りは三層構造でできている。第一に国名のバイアス。国の名前というラベルだけで“将来の故障や下取り価値の下落まで”を短絡的に予測してしまう心のクセ。

 第二に同調圧力。仲間内で「それ買うの?」と茶化される可能性を恐れ、選択を狭めてしまう力。

 第三に、制度+国名バイアスの重なり。EVゆえの保険・査定の“保守化”は全体にある。そこに国名ラベル由来の警戒(「中国製は下取りが弱いのでは」「長期サポートは大丈夫か?」などの先入観)や、地政・報道に起因する評判リスクが上乗せされる。

 結果として、BYDのような“新興EVメーカー”+“中国製であること”の二重の減点を受け、モノが良くとも評価は一段も二段も低くなりやすい。この曇りは、中国のECサイトなどで扱っているような安売り品とは別次元で、中価格~上価格帯の製品ほど厚みを増してくる。

 しかしこうした偏見はすでに過去の話だ。中国ブランドの製品も、韓国ブランドの製品も、(たとえ日本では売れていなくても)海外では人気があり、確固たる地位を築いている。

日本の輸入車ランキングトップ10にBYDが入った

 さてBYDである。

 2025年5月に月間416台を記録し、ついに日本の輸入車ブランド別ランキングで初のトップ10入りを果たした。立役者は今回試乗した発売直後の「シーライオン7」である。単月の約6割を占めたとされる。勢いは翌6月も続き、512台。2カ月連続で“過去最高”を更新した。

 もっとも7月は227台と反落し、8月は239台と小幅に持ち直した。いわゆる“新車効果”が一巡し、実需ペースの正常軌道に乗ったと見るのが妥当だろう(5、6月はBYD発表、7、8月はJAIA月次速報による)。