また、検証は可能な限り小さく、低コストで行うことが望ましいです。最低限の機能やプロトタイプ、あるいはシミュレーションやモックアップを使い、短期間で結果を得られるように設計します。これにより、失敗のダメージを抑えつつ、学びを最大化することができます。
顧客インサイトを正しく活かすためには、発見と検証を往復する習慣を組織に根付かせることが不可欠です。仮説を立て、それを迅速かつ反復的に検証する。この姿勢が、変化の激しい市場環境で持続的に価値を提供できるプロダクトを生み出す原動力になります。
日本の「顧客ファースト」の根底にある
「現地現物」の姿勢
顧客インサイトを活かすうえで欠かせないのが、「顧客ファースト」の姿勢です。顧客ファーストとは単に顧客の言葉に従うことではなく、顧客の声や要望を手がかりに、その背後にある状況や動機、未解決の課題を見極め、顧客がまだ気づいていない価値を先回りして提供することです。
これは、日本の製造業が古くから重視してきた「現地現物」の思想にも通じます。トヨタ自動車が大切にしてきた現地現物とは、現場に足を運び、現物を手に取って確かめることで本質的な課題を見極める姿勢です。顧客インサイトを深く理解するには、机上の情報や二次的な報告に頼らず、顧客が置かれた環境や文脈を直接観察することが重要です。
Amazon Primeは「送料無料・迅速配送」を利点としてサービスを始めましたが、顧客が求めているのは単なる配送スピードではなく、日々の買い物を安心して任せられる"生活基盤"だと気づきました。その結果、動画配信や音楽サービスなどを統合した包括的サービスへ進化し、長期的なロイヤルティを築いています。
