京都市内の「琵琶湖疏水」を歩く

南禅寺船溜琵琶湖疏水記念館(左京区)から「南禅寺船溜」を一望。噴水は琵琶湖疏水から勢いよく流れ出る水圧を利用している

 国宝「琵琶湖疏水」に浸る旅は「琵琶湖疏水記念館」からスタートしましょう。地下鉄東西線「蹴上」駅近くには、映画『国宝』ロケ地のひとつ、ウェスティン都ホテル京都や初夏のツツジが見事な蹴上浄水場もあります。駅から北へ直進すること7分ほど。映像やパネル、資料、模型など通して琵琶湖疏水の歴史や構造を学ぶことができ、しかも入館無料!  豊かな水をたたえる池(南禅寺船溜)を一望する春秋限定営業のカフェも忘れずに。

旧御所水道大日山水源地喞筒所赤レンガ造りの建物は、京都御所の防火用水として建設された重要文化財「旧御所水道大日山水源地喞筒所(旧御所水道ポンプ室)」。建物の奥に国宝「第三隧道」の出口がちらりと見える

 琵琶湖疏水記念館から来た道を戻り、「蹴上」駅に向かって坂を上がります。「京のお伊勢さん」こと日向大神宮の一ノ鳥居をくぐると、琵琶湖疏水の京都側出口はすぐそこ。初代内大臣の三条実美揮毫「美哉山河(うるわしきかなさんが)」の扁額を掲げる国宝「第三隧道」西口から疏水が流れ出る様子も。琵琶湖から約10kmの地点となります。

 記念館の周辺には、重要文化財「蹴上放水所」「蹴上浄水場第一高区配水池」「蹴上発電所旧本館」もあり、そのすぐそばには国宝「インクライン」も。インクラインとは、船が琵琶湖疏水を往来する際にネックとなる高低差を解消するため、ケーブルカーと同じ方式で船を台車に載せて運んだ傾斜鉄道のこと。線路跡が桜のアーチとなる春や紅葉の秋には賑わいますが、それ以外の午前中は特に人が少なく、街中のオーバーツーリズムをしばし忘れさせてくれる穴場でもあります。

インクライン全長約582m、建設当初は世界最長を誇った国宝「インクライン」の起点

 国宝「南禅寺水路閣」へ行くには、ここから下りて南禅寺の参道を歩くのが王道ルートですが、知る人ぞ知る裏道があります。疏水分線に沿う緑豊かな小道を8分ほど歩くと、赤レンガの美しいこの建造物に。橋の上をよどみなく水が流れ、その名の通り水路であることが実感できます。

 南禅寺水路閣を見学し、南禅寺を拝観した後は、琵琶湖疏水を引き込んだ山県有朋の別邸だった無鄰菴の庭園や平安神宮や神苑を堪能し、鴨川との合流地点の少し手前に立つ重要文化財「夷川発電所」をチェック。余力があれば、疏水分線の哲学の道をそぞろ歩いて思索にふけるのもいいでしょう。

 以下、5件の国宝以外の重要文化財19件をご紹介します。名称は竣工当時の記録により、現在の名称とは異なるものがありますが、「琵琶湖疏水」を極めるためのチェックリストとしてご活用ください。太字は記事内で触れたものです。

大津閘門及び堰門大津運河安朱川水路橋第一〇号橋/第一一号橋/夷川閘門/第五隧道/第六隧道/日岡隧道/新旧両水連絡洗堰/合流隧道/蹴上放水所/七瀬川放水所/蹴上浄水場第一高区配水池/旧御所水道大日山水源地喞筒所/蹴上発電所旧本館夷川発電所本館/伏見発電所本館/本願寺水道水源池

南禅寺水路閣への裏道せせらぎを感じ、鳥のさえずりを聞きながら歩ける南禅寺水路閣への裏道