ところがロシア軍は、3年間経ってもウクライナに勝つことができませんでした。

 ですから、この話は「ロシア軍優勢ですごい」ではなく、「ウクライナはロシア相手に3年も戦ってすごい!」なのです。

 そして、ロシアはウクライナとの戦争に勝ったとしても、ウクライナ侵攻で「地政学的大敗北」を喫することになりました。どういう意味でしょうか?

旧ソ連国家のロシア離れが
止まらない深刻な状況に

 ロシアは、自国のことを「旧ソ連の盟主」と考えています。

 そして、ロシアは旧ソ連圏のことを「勢力圏」と考えています。

 ところが、ウクライナ侵攻の結果、旧ソ連諸国は、一斉にロシアから逃げ出しているのです。具体的な動きを見ていきます。

 まず、ウクライナ、モルドバ、ジョージアが、EU加盟申請を行いました。

 加盟申請をしたのは、ウクライナが2022年2月、モルドバとジョージアが同年3月。これは、明らかにウクライナ侵攻を受けた動きです。

「EU加盟申請」の意味は何でしょうか?この3カ国は、「ロシア中心の旧ソ連圏から離脱して、EU圏に入る」という意志を宣言したのです(ジョージアでは、親ロシア派がだいぶ盛り返しているようですが)。

 次にコーカサス地域、アゼルバイジャンとアルメニアの動きを見てみましょう。この2カ国のうちアゼルバイジャンはかなり前からロシアよりトルコを重視しています。

 アゼルバイジャンとアルメニアには、「ナゴルノ・カラバフ問題」があり、しばしば衝突を繰り返してきました。「ナゴルノ・カラバフ問題」とは何でしょうか?

 アゼルバイジャンが自国領と考えるナゴルノ・カラバフ地域は、アルメニア系住民が大多数を占めていました。彼らは1991年9月、「アルツァフ共和国」建国とアゼルバイジャンからの独立を宣言。アゼルバイジャンは当然これを認めず、紛争に発展しました。

 紛争の当事者は、アゼルバイジャンと、アルメニア系のアルツァフ共和国を守るアルメニアです。