フレンチで三つ星を獲得した日本人シェフ
味噌や柚子で繊細な味を表現
日本人シェフのフレンチレストランがミシュランの星を取ることも珍しくなくなった。今、日本人が作るフレンチは、フランスで高く評価されている。
2020年、パリの「Restaurant KEI」を率いる小林圭シェフは、日本人として初めてミシュラン三つ星を獲得した。寿司や天ぷらといった和食ではなく、フランスにおいて正統派のフレンチとして日本人が三つ星を獲得したのは異例のこと。
小林シェフの料理には、バターやクリームに頼らず、味噌や柚子(ゆず)を取り入れる繊細な工夫がある。鳩(ハト)をじっくりとローストした小林シェフのスペシャリテには味噌が使われている。
パリの「Blanc(ブラン)」を率いる佐藤伸一シェフは、2011年に日本人として初めて二つ星を獲得した実力派。濃厚なコンソメなどではなく、出汁のように澄んだスープで滋味深さを表現するアプローチなど、フレンチの“重厚さ”に慣れたフランス人の舌に新鮮な驚きを与えた。
他にも、近年フランスでは日本人シェフの活躍がめざましい。フランスの高品質な食材を用い、日本人ならではの繊細な味を生み出す美しい皿の数々は、フランス人たちの舌をうならせてきた。
醤油や味噌以外にも
「YUZU」「WASABI」が広まる
重厚なソースに頼るのではなく、発酵や出汁を活かして味を組み立てる、新しいフレンチ像。そのやり方はフランスで評価され、フランス人シェフたちも味噌や醤油といった日本の調味料を料理に取り入れ始めた。
現在はフレンチの厨房(ちゅうぼう)で、醤油や味噌以外にも、「UMAMI」「YUZU」「WASABI」といった日本の調味料の名前が飛び交い、メニューにもそのまま表記されている。
レストランでの普及から、フランスの一般家庭へも広がりを見せていった醤油と味噌。今では家庭の台所においても、日常的なアイテムとして自然に置かれている。前菜にスープ、メイン料理にデザートまで。
フランス人の友人が醤油と味噌を評して「日本ってすごい!これさえあれば、バターはいらないね」といったが、それがフランスにおいて、リアルな食卓になりつつある。