ペプシコーラ、ケンタッキーフライドチキン、ピザハットを次々と再建し、「フォーチュン」や「ハーバード・ビジネス・レビュー」が選ぶ世界トップリーダーである伝説のCEOデヴィッド・ノヴァクが、成功者100人から得た知見を『Learning 知性あるリーダーは学び続ける』にまとめている。本記事では、その一部を抜粋・編集し、「成功し続ける人になる秘訣」を紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

炎上で世界中から批判された「乗客引きずり事件」
ユナイテッド航空元CEOのオスカー・ムニョスが、2017年にシカゴ発ルイビル行き3411便で起きた乗客トラブルから学ばなければならなかった厳しい教訓がある。
彼は後に「おそらくそれまでの私の人生で最大の失敗だ」と語っている。
その日、ユナイテッド航空の従業員4人が、翌日のフライトに乗務するためにケンタッキー州ルイビルに行く必要があった。このような状況では、彼らは必須の乗客とみなされる。そのフライトは満席だったため、同航空は特典と引き換えに飛行機から降りてくれる志願者を募った。
誰も名乗り出なかったので、彼らはランダムに4人の乗客を選び、飛行機を降りるようにアナウンスした。その中の1人に、69歳の乗客デヴィッド・ダオ医師がいた。
彼はすぐにユナイテッド航空に電話し、翌日患者を診察するためにどうしてもルイビルに帰らなければならないと説明した。
だが同航空はそれを認めなかった。
ダオ医師が飛行機から降りるのを拒否すると、ユナイテッド航空の従業員がセキュリティを呼んだ。それでも拒否するダオ医師を、彼らは手荒く扱った。
ダオ医師は悲鳴を上げ、座席から通路に引きずり出され、頭を打った。その痛ましい光景は撮影され、ツイッター(現X)に投稿された。動画はあっという間にネット上に拡散され、多いものだと1日で700万回近くも再生された。
「私たち(ユナイテッド航空)は、ツイッターでこのような炎上を経験した初めてのグローバル企業かもしれない」とオスカーは私に言った。
責任から逃げようとした結果
ユナイテッド航空への批判は当然のように思えた。ドナルド・トランプでさえ、同社の対応はひどいと言った。
さらにユナイテッド航空のその後の対応は事態をますます悪化させた。
まず、同社は責任逃れをするような説明をした。ダオ医師を飛行機から引きずり下ろしたのはセキュリティであって、ユナイテッドの従業員ではないと指摘したのだ。
さらに同社は当初の声明で、このフライトはオーバーブッキングだったと述べていたが、それだと自分たちに非があるニュアンスが出てしまうため、一部の乗客に降りてもらったのは、彼らにフライトを「再予約」してもらうためだったと表現するようにした。
「客を飛行機から引きずり出し、手荒く扱っておきながら、それが再予約のためだったというのは、実にひどい言葉の選択だった」とオスカーは語っている。
危機の中で思い出したこと
オスカーは一晩中悩み、幼い頃に共に暮らした祖母のことを思い出した。
祖母は「悪いことが起きても人のせいにしない」人だった。
翌朝、全米放送のテレビ番組『グッド・モーニング・アメリカ』に出演したオスカーは、逃げずにダオ氏と家族、同乗者へ正面から謝罪した。
そして二度とこのようなことは繰り返さないと約束し、ユナイテッド航空がどんな対策を講じるかを説明した。ダオ医師に落ち度がなかったことも明確にした。
正しいことをするのに遅すぎることはない
ユナイテッド航空はその後、再発を防ぐための新しいシステムを導入した。
「全米各地の経営大学院では、最初、悪い事例としてこのケースが取り上げられていた。でもやがてそれは、“正しいことをするのに遅すぎることはない”という教訓を示すためのものに変わった」とオスカーは言う。
アクティブ・ラーナーは、危機の中でも正しいことをしようとする。成長や改善、学習の機会を見つけるのに役立つからだ。
大小を問わず、どんな災難の背後にも、再発を防ぎ、人間関係を強め、ルールを書き換え、成功へのアイデアを発見するチャンスがある。
またそれは、自分が何を支持し、大切にしているのかを確認し、それを指針にするための機会でもある。
(この記事は『Learning 知性あるリーダーは学び続ける』をもとに、一部抜粋・編集し作成しました。)