上手に作るコツは
低温から揚げ始めること?

 揚げ物は水分のコントロールなので、食材から出る水分の扱いが出来上がりに影響します。

 例えばパン粉揚げの場合、揚げることでパン粉から水分が抜けてカリッとした食感が出ます。一方、肉から出る水分が多すぎるとパン粉が湿ってしまう場合があるので、それを防ぐために小麦粉や卵であらかじめ肉をコーティングしておきます。これらの食材が水分を吸い込むので、カリッとした食感が出るのです。

 とはいえ、小麦粉や卵があるからといって、肉を加熱しすぎると筋繊維が収縮し、スポンジを絞るように水分が押し出されるので、仕上がりがベチャベチャになります。

 それを避けるには肉の中心温度を68℃~70℃のあいだに収めること。この温度を超えると肉のタンパク質から水分が押し出されるからです。鶏肉は自分が思っているよりも少し手前で取り出して、温度計で温度を測ってみてください。衣の中で熱が中心に向かって進むので、余熱でも温度は上がります。

 低い温度から揚げ始めるのもコツです。ゆっくりと揚げると中心と外側の温度差を小さくできるので、この温度帯に収まりやすい=上手に揚がりやすいのです。

「泡の出方」が少なくなると
出来上がりの合図

 衣をつけた鶏肉を油に入れていきますが、重ならないように注意しましょう。ちなみに鶏肉1枚を揚げるのに適正なフライパンのサイズは24cmです。

 鶏肉が並んだら中火にかけます。しばらくすると鶏肉の周りに細かい泡が見え、そのうち泡立ってきます。この状態での油の温度は130℃前後。バチッと油が跳ねてくるようであれば温度が高すぎるので、火を弱火に落とし、さらに揚げていきます。

 揚げ続けると衣から蒸発する水分が徐々に少なくなってきます。そうなると気化熱が減るので、油の温度は徐々に上がっていきます。衣が固まったら何度か裏返し、色づいてきたら取り出しましょう。

 トータルの加熱時間は5分~6分といったところ。揚げ物は水と油の交換だと思い出してください。つまり、泡の出方が少なくなってきたら出来上がりの目安です。

 網などで油を切るのが理想ですが、キッチンペーパーや新聞紙でもかまいません。