初めての妻役、「へこたれちゃいけない」

 明治時代が舞台で、まだ着物や日本髪を結っている人たちが残っている。パッと見はいわゆる時代劇。ともすると、遠い時代のお話に思えるが、高石さんの生々しさによって親近感が湧く。

「全体的に、皆さんがイメージする明治とは違うと思います。会話のテンポの良さも含めて、どちらかというと現代に近くて、ドラマをご覧になる方たちがすごくなじみやすいのではないかと。時代は違うけれど、まるで、現代人を見ているような、トキたちが身近にいるように思って見ていただけたらうれしいです」
 
 確かに、家族のシーンは軽快だ。祖父役の小日向文世さん、父役の岡部たかしさん、母役の池脇千鶴さんという演技巧者と高石さんが見事な連携をとって演じている。

「本読み(実際に演技をする前に行う台本の読み合わせ)の段階からあの空気感が出来上がっていて、私は驚きました。本読みで理解を深め、撮影に臨むときには、台本には書かれていない動きが追加されて、より身体的につながることができるんです。

 本読みでも十分家族になっていたのが、セットのなかで動きながらお芝居をすることでさらにつながっていったように思います」

 そこでリーダー的になるのは岡部さんだという。

「岡部さんの存在は大きいです。脚本家のふじきみつ彦さんと昔から一緒にお仕事をされているからこそ、ふじきさんの笑いの間を把握していて。芝居を相手に預けて、自分でやろうとしないとか、いろいろな極意を本読みのときに学ばせていただきました。

 松野家を引っ張っているのは岡部さんですね」

 高石さんのコメディセンスにも注目だ。撮影はNHK大阪局(BK)で行われている。

「まだ撮影がはじまる前から大阪の『ばけばけ』スタッフの皆さんが、私の誕生日にお花と寄せ書きの手紙をくださって。『撮影楽しみです』とか『この1年間、全力を尽くす』などとメッセージをいただき、そこですでに関係性が深まっていったような気がして。

 撮影初日は緊張よりもワクワクでした。スタッフの皆さんが、小泉八雲さんとセツさんへのリスペクトと愛が凄まじくて、それを感じるたびに私も頑張りたいと思います。

 最高のものを作ろうとしているスタッフの方たちがいるからこそ私はへこたれちゃいけないと思うし、一番大変なスタッフの方たちにとっても幸せで楽しい現場になれるために、私ができることがあればしたいという気持ちです」

 ドラマのなかではまだ出会っていないヘブン。誰かの妻という役は今回が初めて。

「とにかくヘブンさんのことをどれだけ好きで、愛して守ろうとするセツさんの心を大事にしようと思っています。『思い出の記』に書かれたふたりの空気感が本当に素敵だったので、何度も読みながらお芝居しています」

【高石あかり プロフィール】
2002年12月19日、宮崎県生まれ。主な出演作に、ドラマ化もされた映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズのほか『遺書、公開』『ゴーストキラー』『夏の砂の上』、ドラマ『墜落JKと廃人教師』シリーズ『わたしの一番最悪なともだち』『御上先生』『アポロの歌』、Netflix『グラスハート』などがある。2023年、第15回TAMA映画賞の最優秀新進女優賞を受賞した。