クーパンの日本再挑戦、ロス・リーダー戦略の狙い
実は、クーパンは一度、日本で失敗している。2021年6月、日本市場に進出し、クイック・コマース(即配サービス)を提供していた。当時は高島屋、ダイソーなどと提携していたが、2023年3月にサービスを終了し、日本市場から撤退した。
今回、約2年ぶりの日本市場への再参入となるが、現時点では飲食店の料理配達に特化しており、食料品や日用品を対象とするクイック・コマースは提供していない。
このビジネス戦略は、マーケティングにおけるloss leader(ロス・リーダー)戦略と捉えることができる。「配送料・サービス料無料」を展開することで、後発参入からの認知度向上、シェア確保を狙っているのだ。
ロス・リーダー戦略とは、一時的に利益を度外視した極端な低価格で販売して、集客を促す価格政策のことである。それにより、長期的な視点で顧客の利用や関心を集め、他の商品の売り上げが増加して全体の売り上げから利益を確保することを目指す。
ただし、この戦略にはcherry picker(チェリー・ピッカー)対策が伴う。これは“熟した美味しいサクランボだけを選ぶ客”の意味からきており、具体的には、セールや特売品などだけを購入する一部の顧客を指す。
過去にマクドナルドが「ゼロ円コーヒー」を行ったことがある。コーヒーは無料でも、ついで買いでハンバーガーを購入してもらう戦略であった。他の商品との関連購買が生まれる仕組みだ。しかし、ロケットナウでは、単純に配送料・サービス料が無料なため、1円でも課金した際には、それまで利用していた顧客が離反してしまう問題が隠れている。
飲食店は販売手数料をいくら支払っている?
ロケットナウの収入になるのが、飲食店側が支払う販売手数料だ。店舗はクーパンに販売手数料をいくら支払っているのか。
クーパンのマーケティング資料には22%からと書いてあるが、コンサルティング先の個人飲食店などに確認すると「28%」という答えが多かった。ウーバーは38.5%なので、この差は大きい。