外国人観光客がそこかしこに酔い潰れて寝ている人がいる光景に驚くように、世界的にも日本は「酔っ払い」に寛容だ。これは治安がいいなどの美徳である反面、「飲酒や酩酊による悪影響」も多いという悪徳にもつながっている。

 例えば、わかりやすいのは「急性アルコール中毒の救急車利用」だ。ご存じ知のように、酔っ払って潰れた人を介抱するために救急車が呼ばれるケースが多発している。このせいで、本当に命の危険のあるような人が迅速に搬送できないなどの問題が指摘されている。

 アルコール依存症など諸問題に取り組んでいる、特定非営利活動法人ASKがまとめている統計によれば、急性アルコール中毒で救急搬送される人は、バブル崩壊直後の1992年に1万件ほどでそこからじわじわ増えて、2019年には1万8212件。その後、コロナ禍で激減するが近年持ち直して2023年には1万3906件だ。

 本当に命に関わる急性アルコール中毒もあるだろうが、調子に乗って飲みすぎたりする人もかなりいるという意味では紛れもない「酩酊による悪影響」だ。

 暴力行為も酷い。JRグループ旅客6社と公営・民営鉄道事業38社局によれば、2024年度に発生した鉄道係員への暴力行為が522件。その半数の原因が「飲酒」だ。

 沖縄県警によれば2022年には県内で「粗暴犯」(暴行や傷害、恐喝など)が874件あったが、その半数は「飲酒」に起因するという。

 では、このように多岐にわたる「酩酊による悪影響」は我々の社会にどれほど負担になっているのか。10年以上前のデータではあるが、厚生労働省には「アルコール関連問題のコスト」としてこう説明されている。

《コストの面でも2013年の全国調査で労働損失が約2兆5千億円、医療費が約4千億円など全体で3兆7千億円に上ると報告されており、過量飲酒は大きな社会問題となっています》

 さて、そこで想像していただきたい。今、欧米で台頭しているWHOのアルコール規制強化の動きは、遅かれ早かれ日本にも上陸する。タバコもそうだった。