エビデンスでは勝敗は決しているので、日本の酒業界としては「健康に有害かもしれないけれど、飲酒は文化だ!人と人との絆だ!」という精神論で迎え撃つしかない。これにアルコール規制推進派が難癖をつけるのは、実はそれほど難しくない。「社会の迷惑」を指摘すればいいのだ。

「いやいや、酔っ払った人はそういう綺麗事を並べるけど、周りにどれだけの迷惑とコストを撒き散らしてるかわかってます?」

 そんな問題提起がなされるなか、、有名芸能人、人気アイドルが酩酊して下半身を露出する、タクシー運転手を殴って恫喝をする、そしてもし飲酒運転で人を殺めるなんてことがあったら――。

 世論は一気に「アルコール規制」に流れるはずだ。「社会の迷惑」で規制ムードを高められるというのは、タバコ規制が証明している。

 20年前、タバコ会社の幹部に「禁煙法制化」の可能性について質問をしたら鼻で笑われた。飲食店などの営業の自由を侵害しているし、そもそもタバコという嗜好品を吸うか否かは、個人の自由なので、それを法律で縛ることなどできるわけがないというのだ。

 しかし、そこから時は流れて受動喫煙の害に関するエビデンスが蓄積され、愛煙家は非喫煙者から文字通り煙たがれる存在となった。街のいたるところに落ちている吸い殻の掃除、タバコの臭いが染み付いた椅子や店内を清掃する手間暇などから、「喫煙は社会に迷惑とコストを撒き散らしている」という「世論」が形成された。

 実はあまり知られていないが、これもWHOが「オリンピック誘致」を餌に日本政府に仕掛けた「世界戦略」である。

 タバコの次は間違いなくアルコールだ。酒業界のみなさんはタバコと同じ轍(てつ)を踏まないように、「社会の迷惑」を減らす努力を続けていただきたい。