フルリモートという条件で入ったのに、労働契約違反ではないのかと上司に言ったところ、『世界的なパンデミックだったのだから仕方なかった』という的外れな返事。しかもその上司は前の外資系上司とは真逆なタイプ。部下を締めつけて成果を絞り出す感じの人で、毎日毎日、進捗状況を報告させられました。

「リモート」が常識の新世代と
出社前提の旧世代に生じる軋轢

 ミーティングが毎日あるのですが、出社している人とオンラインの人とのハイブリッド。ハイブリッドってカッコよく言うけれど、便利な面はありますが、やりづらいですよね。温度感の違う中で、『昨日の達成率』について報告させられます。私は営業ではなかったので、毎日、ルーティンの仕事で、特に報告することもなくて。『昨日と同じく…』という枕詞を言うたびに、他のメンバーに笑われている気がしました。

 まさか、そんなにすぐ会社を辞めることになるとは思わなかったですが、無駄に長くいる必要もないかなと思い、入社1年が経って、転職活動をしているというわけです。

 1年いたのなら、良いのではないですか?1カ月とかだと、社会に適合できない人と思われないか心配ですが、1年いたのならそんなこともなく、第二新卒として転職できるでしょう。

 今、検討しているのは『暗号資産』関係の会社です。何しろまたフルリモートで『どこに住んでもいい』という条件が気に入っています。私は親一人子一人という家庭環境なので、親のそばにいてあげたくて」

 今の若者たちには親思いの人が多い気がしますが、どうやら彼もその1人のようです。

「働くようになって特に、こうして母親が働いて自分を育ててくれたんだと感謝する思いが強くなりました。先日、入院して心配したこともあって、親も賛成してくれています」

 と話していました。

 社会に出たときから「フルリモート」というN君にとって、働くことは「リモート」が常識なのでしょう。働くという概念が、旧世代とは全く違うように思います。選ぶのも「フィンテック」「暗号資産」と時代の先端の業界です。ところが、そんな先端の業界の中にも考え方が先端的ではない上司がいる。旧世代は変わらない。そこの矛盾が大きい時代なのかもしれません。