理不尽な言い分、
立ったまま2時間以上も叱責……

 ある朝、沢田さんが出社すると、彼女と同じく総務課で社長秘書を兼務している先輩Cさん(女性30代)から、B役員が沢田さんのことを相当怒っていると言われました。その理由は、今朝B役員が早めに出社したところ、役員室の鍵が開いていて、デスクに置いてあった菓子折もなくなっていた、というものです。

 役員室を施錠(せじょう)する鍵を管理しているのは役員本人と総務課で、掃除が終わったら施錠して鍵置き場に戻すことになっています。C先輩から、「昨日、最後にB役員の部屋を掃除して鍵をかけたのは沢田さんだよね?」と確認されました。

 たしかに昨日役員室の掃除をしましたが、デスクに菓子折が置かれていた記憶はなく、確実に鍵をかけたはずでした。それをC先輩に伝えると、先輩は「まずは、とにかくB役員のところへ早く行ったほうがよい」とアドバイスをくれ、そのあと「昨日、B役員は社長からいろいろと厳しいことを言われたみたいだし……」とも付け加えました。

 沢田さんは急いで役員室に向かいました。役員室のドアを開けると、険しい表情をしたB役員が沢田さんの顔を見るなり、「今朝、部屋の鍵がかかっていなかったし、デスクにあったはずの菓子折もない。全部お前だろう!」と怒鳴ってきたそうです。

 驚いた沢田さんは、訳がわからないながらもとりあえず謝罪し、掃除をしたときの状況について丁寧に説明をしました。掃除のときはいつもデスクの上のものには触らないようにしていることや、昨日も忘れずに鍵をかけたことを伝えましたが、「では他に誰がやったのか?」「私の勘違いだとでも言いたいのか」などと詰問されると、返す言葉が見つからなかったそうです。

 そのときのB役員は終始、沢田さんが犯人だと決めつけたような言い方をしていたということです。なにを言っても信じてもらえないと思った沢田さんは、途中から「自分が犯人だったことにして謝ったほうが楽かもしれない」とか「もしかしたら本当に自分のミスなのかな」などという考えが浮かんできたそうです。