不動産購入前に知っておきたい
ペアローンのリスク
都心部で利便性がよい不動産を購入するためには、どうしても高額の資金が必要となるため、親子や夫婦でペアローンを組む人は少なくない。ただし、この選択には将来的に大きなリスクが潜んでいる。
まず、相続時のトラブルだ。ペアローンを組んだ場合、亡くなった人の返済分は団体信用生命保険で完済できるケースが多いが、もう一方の債務は返済を継続する必要がある。
さらに、被相続人分の持ち分は相続財産として遺産分割の対象となるため、想定外の遺産分割協議に巻き込まれる可能性がある。大切なマイホームを確実に所有し続けるためにも、遺言書を用いて相続の対策をしておこう。
次に、不動産にまつわる税金の問題だ。ペアローンは「住宅ローン控除(住宅ローン減税)」の恩恵を夫婦それぞれが受けられるメリットがあるものの、それはあくまで制度が維持されている間の話であり、将来の縮小や改正リスクは常に存在する。
現行制度を過信せずに、安心できる返済計画を推奨したい。特にペアローンは「二馬力」で返済することを想定している契約だが、病気や会社の倒産などを想定しておく必要がある。家族の愛情だけでは乗り越えられないトラブルを想定しておこう。
ペアローンは「家を買うための便利な手段」と考えられがちだが、相続や税負担まで視野に入れると、必ずしも得策とは言えない。高額物件を手に入れるための一時的な手段にすぎず、長期的に見れば家族に重いリスクを残す場合がある。むしろ、余裕ある返済計画を立て、単独ローンでの借り入れや、マイホーム購入の際に活用できる「住宅取得時等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」といった制度など、贈与を使った資金計画も柔軟に検討したい。
不動産を取得する際、購入資金や住宅ローン返済に目が向きがちだが、長期的には固定資産税という「ランニングコスト」を毎年負担し続けることになる。さらに、マンションの場合は修繕積立金などもあるため、マイホームの購入時には購入費以外のランニングコストも念頭に置いた返済計画を立てる必要がある。現在不動産は高騰傾向にあり、評価が高止まりする可能性もあるため、相続も見据えた資産形成が求められる。