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NHK朝の連続テレビ小説「ばけばけ」の主人公のモデルとなった小泉八雲・セツ夫妻。八雲がつむぐ言葉は、まるで音が聴こえるような美しい日本の風景を描く。視覚にハンデを抱えていた彼の文章表現の秘密を、曾孫であり小泉八雲記念館館長の筆者が明かす。※本稿は、小泉 凡『セツと八雲』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
妻や愛猫らとともに
自然豊かな地へ移り住む
武家屋敷に住んでみたい。
八雲の切望に応じて、ともに暮らし始めて4カ月ほど後、借家から松江城の堀に面した旧松江藩士の家に転居しました。それが現在、国指定史跡となっている小泉八雲旧居(松江市北堀町)です。今も見学の方が全国からたくさん見えています。
この引っ越しは、セツ(編集部注/のちの八雲の妻)にとっても心弾むことでした。養子に出た先の稲垣家は零落し、愛着のあった家屋敷を出ざるを得ませんでした。少女時代の明暗がわだかまっていたでしょうから。
セツと八雲に女中と、そして子猫と一緒に引っ越しました。この猫は引っ越しの少し前、子どもらになぎさの水につけられてはあげられ、といじめられていたのを、セツが見かねてつれて帰りました。
びっしょり濡れてぶるぶる震えている子猫を、八雲は懐に入れて温めてやりました。その様子にセツは大層感心したといいます。八雲は弱い者いじめが心底嫌いでした。
その屋敷は建坪47.75坪とゆったりしたつくりです。松江城の天守がのぞめました。日当たりが良く、庭に囲まれ、特に南側の庭は枯山水の様式になっていました。池もありました。







