ちなみに当時は「世論調査」もかなり怪しかった。「○○という問題が今、国会で追及されていますが、安倍政権を支持しますか?」というように、調査対象者にネガティブな情報を与えてから、政権の支持・不支持を尋ねるというようなバイアスのかかった調査をしていたマスコミがあったのだ。

 この問題について筆者は拙著「スピンドクター」(講談社α新書)や週刊誌記事で何度か取り上げて「世論誘導ではないか」と指摘して、某大手新聞社の幹部から呼び出されて「こんなこと書かれたら我々の信用がなくなるだろ!」と大目玉を喰らったものだ。しかし、今でも当時の「支持率調査」は大きな問題があると思っている。

 さて、ここまで説明すれば、時事カメラマンの「支持率下げてやる」というのが実はこの世界では特に珍しい話ではなく、むしろ伝統的に行われていた「因習」のようなものだとわかっていただけたと思う。そこで疑問なのは、なぜ「中立公正」をうたうマスコミ人が、イデオロギーに取り憑かれて、特定の政治家を執拗(しつよう)に攻撃するようになってしまうのかということだろう。

報道の歪みを生む
世間知らずの善意

 ネットやSNSでは「マスゴミの上層部が反日左翼勢力に支配されているから」という説明がなされる。筆者も講演やらをすると、そのような質問が飛んでくることがあるが、これまでこの世界にいて、残念ながらそういう構図は見たことも聞いたこともない。

 では、なんでこんなおかしな現象が起きるのかというと個人的には「マジメで世間知らずな人が多いがゆえ、自分が世の中を動かす特別な存在だと勘違いしてしまう」ということが大きいと思っている。

「マスゴミ」なんて言葉のイメージから、この世界で働く人たちのことを、血も涙もない非情さと横暴さがある、非常識な人々だと思っている人も多いだろうが、実際は「マジメないい人」が多い。

 冷静に考えれば当然だ。社会の役に立ちたいとマスコミを志し、狭き門を通って報道の現場で働くようなちゃんとした人たちだ。有名大学出身者も多いので教養や常識もある。筆者の親しい友人や、先輩たちもみんな人間的に素晴らしい人たちばかりだ。

 ただ、マジメではあるが「世間知らず」が多いのも事実だ。