いまも密約の存在を
曖昧にする日本政府
ここで米国の核兵器について、米国のNCNDと日本の「持ち込ませず」の関係が問題になる。日本の領域にいる米軍が核兵器を持っていても、米国がNCNDでノーコメントを貫けば、日本への「持ち込ませず」が形骸化するからだ。
両政府はこの問題を調整するために、安保条約改定の際に事前協議制度を設けた。
日本を拠点とする米国の軍事活動に日本政府が関与できるよう、日本領域で「合衆国軍隊の装備における重要な変更」がある場合は事前に協議するとした交換公文を公表し、その対象は「核兵器の持ち込み(introduction)」であると確認した不公表文書「討議の記録」を交わした。
だが、この事前協議に関して日本政府は今も説明をあいまいにし、ごまかしを続けている。
2022年には国会でこんな議論があった。かつて民主党政権で外相を務めた岡田克也と、自民党政権で岸田文雄内閣の外相・林芳正のやり取りだ。
岡田:核兵器を搭載した艦船の一時寄港や航空機の立ち寄りについて、今の日本政府は、事前協議の対象になるという考え方でよろしいですね。
林:我が国は一貫して、事前協議の対象である核兵器の持込みには米艦船及び航空機の寄港、飛来、通過が含まれると述べてきており、この立場は現在も同様です。
岡田:他方で米国政府は、NCND政策を背景に、一時寄港や立ち寄りは事前協議の対象ではないという考え方と理解していますが、よろしいでしょうか。
林:冷戦終結後の米国の核政策に加えて、米国は我が国の非核三原則に係る立場をよく理解していることから、核兵器を搭載する米艦船及び航空機の我が国への寄港、飛来、通過は現状において想定されていないところです。
岡田:その答弁はちょっと驚きですよ。密約解明前に戻ってしまっていますよ。(以上2022年4月27日、衆院外務委員会)
日米ですれ違う
「持ち込み」の解釈
林の答弁になぜ岡田は驚くのか。「密約」に言及していることも含め補足する。
米軍による日本への核兵器「持ち込み」に関する安保条約の解釈は、陸上については事前協議の対象とすることで両政府はそろっている。問題は海だ。
岡田は林への質問で、核兵器を積んだ艦船の寄港が事前協議の対象になるかどうかについて、日本はなる、米国はならないという立場ではないかと確認を求めている。







