会社やチームのリーダーとして、いま、求められているリーダーとはなんだろうか? 責任をとること? 部下やメンバーの話をよく聞いて、仲を深めること?
『リーダーの言語化 「あいまいな思考」を「伝わる言葉」にする方法』の著者である木暮太一氏は、リーダーの本来の役割は、どこに向かって進むべきかを「言葉で明確に伝えること」だと話す。本記事では、木暮氏に「言語化」について教えてもらう。
 Photo: Adobe Stock
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言語化で「応用が利く人材」を育てる
今はなかなか人が採用できない時代です。特に中小企業は深刻な人材不足に直面しています。これは単なる「人手が足りない」という量的な問題ではなく、もっと本質的な課題があります。
それは、「言ったことしかやらない人材」の問題です。
「マニュアル通りにしか動けない」「自分で考えて行動できない」――こうした声が、ぼくが研修やコンサルティングで支援している企業の経営者やリーダーから多く聞こえてきます。
いろんな研修を実施して人材を育成しようとしています。まじめな人材が多いので、教えたことはできるようになります。しかし教えたことしかできません。教えた通りの事例でしか考えられません。つまり、応用力が想像以上に低下しているのです。
「応用力」こそが重要
教えても教えても、応用が利かなければ人は育ってはいきません。ぼくらは「応用が利く人材」を育てることが必要です。
ひとつの経験や知識を、別の場面でも活用できれば、育成コストが低下するだけでなく、業務スピードが上がりますし、成果も格段に増えるでしょう。応用力が必要なのは今に始まったことではありません。でも、この「応用力」がより重要度を増しています。
その理由は3つです。
第一に、変化のスピードが速すぎるからです。
5年前の正解が、いまは不正解になっている。そんな時代です。個別具体的なスキルだけを教えても、すぐに陳腐化してしまいますね。だからこそ、状況に応じて自分で考え、適応できる応用力が必要なのです。
第二に、育成にかけられる時間とコストがどんどん減っているからです。
ほとんどの組織では「いつか育ってくれればいいよね」などと、悠長に待っている余裕はもはやありません。できるだけ早く戦力になってもらわなければいけませんし、できるだけ早く人材が育ってくれなければいけません。組織によっては1人で複数の役割を担わなければならないこともあります。営業しながら企画もやる、製造しながら品質管理もやる。そんな状況では、ひとつの分野で長時間かけて育成することはできません。
第三に、イノベーションには応用力が不可欠だからです。
新しい価値を生み出すには、既存の知識を組み合わせる力が必要ですね。A社の成功事例とB社の失敗事例を掛け合わせて、自社ならではの戦略を考える。こうした創造的な仕事は、応用力なしにはできません。
つまり、これからの時代、企業が生き残るためには、「応用が利く人材」を育てることが絶対条件なのです。



