勘右衛門(小日向文世)は「ラストサムライ」

 松江に上陸したヘブンは歓迎式典の会場・堀尾旅館に案内される途中、三味線の音を聞いてウキウキ踊りだす。音が鳴っている出どころが気になって、吸い込まれるように天国遊郭街へ――。

 格子越しから店内を真剣にのぞいているヘブンに、遊女に興味があるのかと思ってトキとサワは眉を潜める。それに比べて錦織(吉沢亮)は、遊郭街に入ることをためらい、門の前でもじもじし、「行きたくないんだそっちには」とトキたちに「ヘブンを呼んで来て」と頼む。

「潔癖やん」「失礼だよね」と遊郭に興味があってもなくても悪く言うサワ。

 視聴者的には錦織の潔癖さには好感度が上がったことだろう。第4週ですでに錦織の好感度は吉沢亮の基本生真面目、時々ユーモラスな演技も相まって上がっているので、潔癖属性もプラスされて、ますますキャラとしてまさに「盤石」に。

 ヘブンも別に好色なわけではなく、三味線に引かれただけであった。そして、この場所が「天国遊郭」という名称であることを知る。天国町にある遊郭だから天国遊郭。そして、天国は英語でヘブン。彼の名前と同じだった。遊郭は訳さなくても理解しているのだろうか。

 こんなところで時間を潰している場合ではない。歓迎式典がはじまると錦織はそわそわ。でもまたヘブンは何かに引かれてついていってしまう。

 勘右衛門(小日向文世)に「ラストサムライ」と目を奪われたのだ。侍の写真までヘブンは大切に持っていて、見比べて感動している。トキたちが「天狗(てんぐ)」と言って感動しているのと同じようなものである。

 勘右衛門は「異国船の見張り番をつとめたこのわしが」とヘブンに木刀で打ちかかる。その目はこれまで「見たことない目をしている」と言われるほどにメラメラと燃えていた。いまはお役目がなくなって死んだような目で日々生きている彼も、武士モードになるとキリッとなるようだ。

 ヘブンは堀尾旅館でなく花田旅館に滞在することを決める。「立派なのは好きじゃない」と庶民派アピール。浴衣を着て、椅子には座らず、畳にそのまま座って、ごきげんのヘブン。

 平太(生瀬勝久)は少し宿賃を上げた。ヘブンが県から月100円もらうと聞いたのだ。ウメ(野内まる)の給金は月90銭。なんという格差。

 当時の貨幣価値は、そば1杯1銭。また、明治23年に開業した帝国ホテルの1泊料金は2食付きで2円50銭〜9円だった(帝国ホテルのサイトより)。2泊で5円だから、ヘブンの1カ月の給金で40泊くらい帝国ホテルに泊まれる計算だ。花田旅館は1泊いくらなのだろう。

ヘブン(トミー・バストウ)は「月収100円」、当時の物価で帝国ホテルに何泊できた?〈ばけばけ第22回〉

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