◆ケース2

もうすぐ60歳で定年になる。勤務先の企業型DC(確定拠出年金)を一時金で受け取るか、分割(年金)で受け取るか、すぐに受け取らないで運用だけ続けるか(運用指図者)迷っている。60歳以降は再雇用で働くつもり

→60歳で受け取らずに、積立金をiDeCoに移管して積み立てを続けよう。

 企業型DCのお金をすぐに使う予定がないなら、定年時に積立金をiDeCoに移管し、積み立てを継続するのをお勧めする。

 これまでiDeCoに関心のなかった会社員の人にこのようなアドバイスをすると「そんな方法があるのですか!」と、びっくりされる。

 企業型DCとiDeCoを一時金で受け取る場合は、「退職所得」として課税される。

(退職金収入-退職所得控除額)×2分の1=退職所得←これに所得税・住民税がかかる

 退職所得控除額は「非課税枠」のことで、勤続年数(DC、iDeCoは加入期間)に応じて増える。企業型DCの積立金をiDeCoに移管し掛金拠出すると、加入期間を引き継ぐことができる。結果として、退職所得控除額を増やすことができるのだ。

 勤務先の退職一時金と重複する期間はDC・iDeCoの加入期間から引かれてしまうが、退職一時金を受け取った際に「退職所得控除額」が残っている人は、iDeCoに引き継ぐことで有効利用できる選択肢があることを知っておきたい。

◆ケース3

年収160万円の派遣社員。iDeCoを月1万5000円積み立てているが、「年収の壁問題」で160万円まで所得税がかからなくなったということは、iDeCoを続ける意味はない?

→続ける意味はある。所得税の節税効果はゼロになったが、住民税は1万8000円節税になる。

 老後資金の足しにしたい、節税効果を得たいとiDeCoで積み立てしてきた。無理なく毎月1万5000円を積み立てていたら、今年から給与収入160万円まで税金がかからない減税が始まったというニュースを見て、iDeCoを続けるのが得策かどうか迷い始めた人がいる。