といっても、好かれようと人を持ち上げたり、プライベートの飲み会などで仲良くしたりしているわけではありません。

 むしろ、人間関係はさらりとしている。1人の人間同士として誠実につき合い、信頼を損ねる行為をしなければ、“人望”は厚くなっていくのです。

オファーする側が重視するのは
仕事のデキよりも人柄

 私も仕事関係でつき合いのある編集者や営業担当は、出版社というより、個人的な信頼関係を10年、20年と長きにわたって築いてきた人たち。デビュー間もない私に根気よく指導してくれたり、一緒に悩んだり試行錯誤したりしながら、いいことも、そうでないことも“戦友”のようにくぐり抜けてきました。

 阿吽の呼吸で仕事がしやすく、トラブルも起きにくい。最初は平社員だった彼らも、いつの間にか決定権をもつ役職になって声をかけてくれるようになり、ますます心強い存在に。

 さらに彼らが転職で別の会社に移ったり、定年退職でフリーになったりしても声をかけてくれ、仕事は長く続いてきました。

 また、逆に私がオファーする側になって「一緒にやらない?」と声をかける秘書、WEBライターなども、能力以前に「気持ちよく仕事ができるか?」という感覚的、情緒的な部分が大きい。

 まったく能力がない人は論外ですが、ある程度のレベルがあれば、一緒に成長していけると思うのです。

 単に摩擦がなければいいわけではなく、互いに弱点があっても受け入れたり、意見の相違があっても話し合えたりすることが大事。

 組織では、嫌な人、苦手な人と一緒に仕事をすることはあたりまえにありますが、個人になると、夫婦や友人関係と同じで、だれもが自分で相手を選ぶ権利があります。

 たとえ大きなメリットがあっても、嫌な人とは一緒にいたくないのです。

 自分と波長の合う相手を選ぶだけでなく、つねに尊敬と感謝を忘れずに、それを相手に示すことが必要です。

 人間関係はよく「相手あってのこと」と言われますが、相手は変えられないので、基本、自分1人の問題です。

 どんな人とつき合い、どんなふうに受け止め、どんな態度や言葉で接するのかは自分次第。そんな自分の考え方や態度は、相手に鏡のように表れます。