それでもようやく火群がかきたって、パチパチと燃えだすと、私も兵隊たちもそのたき火を取り巻いて、かじかんだ手をかざしたのである。殻はみるみるうちにすっかり燃えつきてしまった。
しかし私たちはそれでも、そこを離れようとはしなかった。刻々と黒い灰に変わっていく火元をかきわけていたのである。それはふるさとの囲炉裏端にいるような温かい情感にいつまでも浸っていたからである。
小石のような雪が降るなか
敵か味方かもわからない人影が
18人は、再び突進を開始した。雪も風も一段と激しさを加えて吹きつのってきた。軍服を打つ雪がパラパラと小石のようである。膝頭には刺すような冷気が加えられた。歩いてきた三々五々の足跡も、またたくまに吹雪に掃き清められて、私たちの難行軍は、なに1つ記録されなかった。
キロ数と時間から推定して3分の2の地点までは行軍してきたことを、一行は暗黙のうちに知っていた。この野を突ききったら禹城にでるのだ。
禹城には工兵の大部隊が集結している。そこには、赤々と燃えあがっている火も待っている。ふつふつと煮えたっている飯と汁も待っているのだ。それらの姿を幻に描き、心で呟きながら進んでいる私たちであった。
高粱畑が大きくざわめいたとき、一行の視野のなかに、1人の農夫らしい男の影がうつっていた。それはまるで通り魔のようにすら感ぜられた。再びその影を見定めようとしたとき、すでにもう吹雪のなかに湮没してしまっていたのだ。
しかし、だれ1人として、その人影について口を開くものはいなかった。一行の観念は、そんなことを考える余裕もなく禹城に飛んでしまっていたからである。だがこんどは、どうしても7、8人の人影を注視しなければならなかった。
真向いの白い吹雪の幕からクッキリと浮びあがった影。1人、2人、5人と。しかもその影はだんだん近づいてくるのだ。敗残兵か、土匪か。検問しようとする準備が、瞬間兵隊たちの間に整った。銃把持つ手の握りにぐっと力が加わったのがそれだ。







