「面接はうまくいった」候補者が
だいたい落ちる理由

 三つ目の理由は、候補者側の「面接がうまくいった」という認識自体が間違っているというものです。

 転職面接を終えて「うまくいきました!」と声を弾ませる応募者に、どううまくいったのかと尋ねると、こんな答えが返ってくることがあります。

「自分を出せました!」
「思っていることを全部話せました!」

 残念ながら、こういうケースはだいたい落ちています。面接は自分のプレゼンではなくコミュニケーションの場だからです。自分だけ一方的に話してしまう人は相手の話を聞いていないことが多いですが、面接で何より大切なのは質問に対して的確に答えることです。

 自分の回答に対して相手が興味を持てば、質問を重ねてくれます。そこで再び的確に答えると、また質問を投げかけてもらえます。このやり取りを繰り返して自分を深掘りしてもらい、ちゃんと理解してもらう。その上で、採用の可否をジャッジしてもらうのが転職面接の正しいプロセスだといえます。

 自分が話したいことを一方的に話しても、相手の頭に残りません。人事の側からすると、「あれもこれも」と一気に話されると混乱し、頭の中で整理できなくなります。

 そこで筆者が経営するクライス・アンド・カンパニーでは、面接が苦手な人に対し、コミュニケーションにおけるトレーニングプログラムを実施しています。

 一方的に話しがちなタイプの人に対しては、「聞かれたこと以外は、話さないようにしましょう」とアドバイスしています。その上でトレーニングを何回かすると、だいたいの人は「こう受け答えすればよいのか」とわかるようになります。

 面接がうまくいったかどうかの判断基準は、「自分が話したいことを全部話せたか」ではなく「自分のことを深く理解してもらえたか」です。その場の話が盛り上がったからといって、面接がうまくいったとは限らないのです。