候補者に「良い印象を持たせる」のが
いまの面接のトレンド

 まず大前提として押さえておきたいのが、現在の採用面接は「アトラクトモード」で行われている点です。

 直訳すると、アトラクト(Attract)とは「引き付ける、魅了する」といった意味です。採用の分野においては、企業側が面接で自社の魅力を応募者に伝え、入社の動機付けをすることを指します。

 一昔前は圧迫面接を行う会社を見かけましたが、いまそれをやればSNSで暴露されて炎上必至でしょう。人事はそうした事態が起こらないよう慎重になっているので、現代のビジネス界から圧迫面接は姿を消し、候補者に良い印象を持たせるような面接が繰り広げられているのです。

 とはいえ、応募者に過剰な期待をさせた上で不合格通知を送ったら、落胆が大きくなり、愛が突然憎しみに変わるかもしれません。この場合も、一転してマイナスイメージを持たれ、SNSなどで悪く書かれる可能性があります。

 経験を積んだ人事はこの点を熟知しているので、面接中に「不合格の可能性が高い」と判断した候補者に対しては「モード」を切り替えます。失礼のない範囲で期待を持たせないような対応をし、お引き取りを願う布石を打つのです。

 しかし、経験の浅い面接官の中にはアトラクトモードから切り替えられない人もいます。内心では「ウチに合わないな…」と思っていても、なかなか上記のような「大人の対応」ができません。面接で応募者のご機嫌を取るようなリアクションをし続け、さんざん持ち上げるのです。

 でも、結論はもちろん不合格。盛り上がった挙げ句に不採用になる理由の一つ目は、こうした「面接官の未熟さ」が挙げられます。

 二つ目の理由として考えられるのは、「面接後にもっと評価の高い応募者が現れる」というものです。

 企業が採用する人数には限りがあり、中途採用の枠が埋まってしまえば不合格となります。面接の時点では高く評価され、人事が「ぜひ入社してほしい」とアトラクトモード全開で接していても、その後に状況や評価が変わる可能性は大いにあります。

 面接後に優秀な応募者が現れて、「確かにAさんも良かったけど、Bさんの方がもっと活躍してくれそうだな…」とてんびんにかけられた結果、不採用になるというわけです。採用枠に対して応募者の多い若手層で、起こりがちなパターンです。