M氏は株式譲渡契約で、2023年末までにA氏の保証を解除する手続きをすると約束。さらに、事前に公庫から解除が難しいと言われた経緯を踏まえ、他行での借り換えや自己資金での返済をするとの念書も出していた。
大阪市の信金と借り入れが最多だった別の信金では、2024年8月初めまでに経営者保証をM氏に移せた。ただ、2900万円の借り入れがある公庫は手続きが進まなかった。
8月には電気代、コピー機のリース代、仕入れ代金など、多くの支払いで督促を受けた。1760円のインターネット代さえ口座から引き落とされなかったが、それでもM氏は振り込みに応じる姿勢をまだ示していた。
9月には消費税の未納分が200万円近くに膨れ、A氏の給与や一部スタッフの人件費が払われなかった。公庫からは保証解除ができないと改めて連絡を受け、A氏はM氏に自己資金での返済を求め始めた。
「払います」と言った新社長が
忽然と姿を消した
未払いが積み上がるさなかの10月16日、A氏とM氏の2人は近くの喫茶店で話し合った。
A氏によると、M氏は「万一、自分に何かあったら、経営はどうします?」と聞いてきた。倒産寸前の会社を押しつけるつもりだなと察したA氏は、冷静に答えた。
「資金がきついんでしょう?会社の資金を承継時の状態に戻してくれたら、引き継いでもええよ」
そうした返答も踏まえてのことだろう。M氏は10月21日のLINEで、こう切り出した。
「何が一番良い選択かは正直わからないが、精神的なことも限界と感じ、自分なりに検討しました。在庫を一掃処分して、年内早くて11月末で閉める方向で進めたい。この結論で動きたい」
その後も給与の支払いや税金の納付を約束したM氏だったが、10月25日にはスタッフ全員の給与が払われず、A氏の自宅には公庫の督促状が届き始めた。
支払いを求め続けるA氏に、M氏は10月29日のLINEに短く残した。
「おつかれさまです。月内での振込承知してます」
その2日後からM氏は応答しなくなり、LINEの既読もつかなくなった。







