ネガティブな思考にハマるのを防ぐ「言いかえ術」

本書は、ネガティブな考えにハマるのを防ぐ方法を教えてくれている。

びっくりするほど簡単、かつ、科学的に効果が実証されているテクニックである。

その一つが、頭の中で話しているときに「私」「あなた」に替えることだ。

たとえば、「私は大きな間違いを犯してしまった」を「あなたは大きな間違いを犯したと思っている」にする。自分自身の課題よりも他人の経験のほうが冷静に見やすいものだ。
――『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(p.99)

「自分ごと」にしすぎると「冷静さ」を失う

人のことなら冷静にアドバイスができるのに、自分のこととなると取り乱してしまうのは誰しも心当たりがあるだろう。

先日、息子が「友だちに間違ったことを教えてしまった。きっとすごく怒っていると思う。合わせる顔がない」と言って落ち込んでいた。

「誰でも間違うことはあるでしょ? 謝れば許してくれるよ」と私が言っても「そんなはずはない、もう嫌われてしまった」と言って聞き入れない。すっかり憂鬱になってしまい、何もやる気が出ない様子だった。

ところが彼は、同じようなことを彼の弟が言ったとき「大丈夫だよ、素直に謝れば友だちもわかってくれるから」とアドバイスをしていたのだ。

“自分から距離を取る”と、思考は一気にクリアになる

自分の考えから距離を取ることさえできれば、冷静になれる。

息子の例で言えば「あなたは、友だちに間違ったことを教えてしまったから友だちが怒っていると思っている」と言い換えればいいわけだ。

自分のことでなければ、弟にアドバイスしたように冷静に考えることができ、ネガティブな妄想から抜け出すことができる。

感情的になっているときに、考えすぎるとかえってよくない大きな理由は、その体験に深く入り込みすぎてしまうから――とミシガン大学の心理学教授イーサン・クロス博士は説明している。
(中略)一歩下がって全体像を見るようにしよう。
これは「セルフディスタンシング(自分の思考・感情と距離を置くこと)」として知られるテクニックだ。
――『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』(p.98-99)

「今感じているストレス」と一瞬で距離を置くには?

「私」を「あなた」に言い換えるほかにも、

・困難な経験を振り返って観察する際、自分は壁にとまったハエだと思う

・「心のタイムトラベル」=今現在感じているストレスを1週間後、数年後にどう感じるかを想像してみる
といった方法がある。

ちなみに息子は、友だちに会いに行って謝ろうとしたところ、「そんなに心配させちゃってごめん」と逆に謝られたそうだ。

まったく怒っていなかったし、「嫌われたかも」は妄想でしかなかった。

ネガティブな妄想から距離を取るテクニックは今後も役に立ちそうである。

(本稿は『瞬間ストレスリセット――科学的に「脳がラクになる」75の方法』に関する書き下ろし特別投稿です)

小川晶子(おがわ・あきこ)
大学卒業後、商社勤務を経てライター、コピーライターとして独立。企業の広告制作に携わる傍ら、多くのビジネス書・自己啓発書等、実用書制作に携わる。自著に『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『オタク偉人伝』(アスコム)、『超こども言いかえ図鑑』(川上徹也氏との共著 Gakken)、『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』(サンマーク出版)がある。