表情や口ぶりに
その人のニーズがあらわれる

 説明の中でも、自分の行動の決定に関係ありそうなところには関心を持ちますし、そうでない部分は聞き流します。

 たとえば、体調を崩して病院で診察を受ける人が一番関心を持つのは「治るためにどうすればいいか」です。薬を飲めばいいのか、入院が必要なのか、手術を受けた方がいいのかなど、治るための行動を選択するために医師の説明を聞くわけです。

 そういう人に、医学部で教授が医学生に教えるような病気の発生のしくみを事細かに説明しても、「先生、そういう細かいことは後でいいですから、これからどうしたらいいか教えてください」と言われるでしょう。

 会社で企画のプレゼンをする場合も、企画の採否を決定する人が何を気にしているかによって、力点の置き方が変わるはずです。

「斬新さよりもコストがかからないことが大事だ」と思っている相手には、「この企画にはコストがかからない」ということに重きを置いた方が興味を引けると思います。

 重要なのは、相手のことをよく観察して、どんなニーズを持っているのかを想像することです。

 相手が普段から何を話しているか、相手がどういう経緯で自分の説明を聞いているのか、話を聞いているときにどんな表情をしているかなど、相手のことを知る手がかりはたくさんあります。

 私は最近、武術を始めたのですが、それを近しい人に話したところ、不安げな顔で「どんな武術?」と訊かれました。私はその武術がどこで発祥したかとか、どんな練習法があるかとかを延々と話したのですが、相手はあまり関心を示しません。

 そこでようやく、相手の関心が「私がやっている武術の詳細」ではなく、「その武術は危険ではないのか」「私が練習中に怪我をしないか」にあることに気づきました。「不安げな顔」というサインが相手の関心のありかを示していたのに、私はそれを見逃していたのです。

正確性を気にしすぎると
逆にわかりにくくなる

 説明をするとき、ターゲットとなる人々に集中するというのも重要です。