専門家は往々にして、専門外の人に説明をするときにも他の専門家の目を気にしてしまいがちです。それはもちろん悪いことではなく、正確さを保証したり、いい加減なことを言わないよう注意したりする上で大切なことです。

 しかし同業者の目を気にしすぎると、専門外の人にとっては意味不明なディテールが紛れ込み、説明がわかりにくくなります。

 たとえば「ここではこんなふうに簡略化した言い方をしてますけど、それは一般向けの説明だからそうしているだけで、本当はこんなふうになっています」といった言い訳が随所に入ってしまうと、その分野に馴染みのない人にとってはわかりにくい説明になります。

 初心者は説明の要点をつかむだけでもたいへんなので、余計な負担がかかると「何を言っているのかさっぱり分からなかった」ということになりかねません。

 今このときに話を聞いてくれている人たちに意識を集中して、それ以外の人たちの目を気にしすぎないようにした方が説明が伝わりやすくなると思います。

結論を先に言ったり
話の全体像を最初に見せる

 講演や講義、プレゼンなど、少し時間を取って説明をする場合は、最初に「ゴールと道筋」を簡単に知らせておくのが大切です。なぜなら、早めに全体像を見せておかないと、聞き手は不安になるからです。

 誰でも、「これから旅行に行こう」とだけ言われて、行き先も旅程も告げられずに連れ回されると不安になるでしょう。説明にも、それと似たところがあります。

 私は講演をするとき、最初に話の主旨を3つほど箇条書きにして提示します。その後に、話の流れ(アウトライン)も3つほど箇条書きにして見せます。

 最初に細かい目次を見せる必要はなく、聞いている人が「全体の流れの中でいうと、今だいたい、この辺にいるんだな」ということが分かれば十分です。

 仕事の手順を説明する場合も、ゴールを明確にしてから手順の説明に移ります。とくに相手がその仕事に不慣れな場合は、ゴールそのものが分からなかったり、仕事の目的を聞き逃したりしていることがあります。