積極財政+金融緩和では、景気拡大への期待から株は上がる。ただし、(国債増発と財政悪化の懸念もあり)円安、金利上昇も加わることになった。これが、「高市トレード」と呼ばれるものである。

 もっともこの高市トレードは、現在の環境では思わぬ余波も生じる。円安は、食料やエネルギーを輸入に頼る日本にとって物価高の要因だ。食料品や日用品の値上げが相次ぐ中、1ドル140円台後半~150円台突破のここ1カ月の円安進行は、スーパーやコンビニに並ぶ商品の価格上昇にさらに拍車をかける。

 また、物価高対策のための財政拡大は、需要喚起や通貨量の拡大を通じて、更にインフレになるという矛盾をはらんでいる。ガソリン税引き下げや補助金交付も、当面の対策のはずが、「物価高→対策→さらなる物価高」という負のループに陥りかねない。

 そのあたりは高市首相も意識しているはずで、所信表明演説でも「責任ある積極財政」を表明した※1。

株や不動産は上がっても
実質所得が上がらなければ意味がない

 もっとも「責任ある積極財政」が上手く行くかは不透明だ。まず、財政拡大で経済成長率が伸びるかどうかは分からない。これまで日本は何年も財政拡大してきたが、成長率は伸びていない。

 また、国民の実質所得はインフレによって目減りする※2。そのため、所得が向上し豊かになったと実感できるかは未知数だ。株や不動産などの資産価格は上がっても、実質所得は上がらない状況が今後も続けば、国民の不満は溜まるだろう。

 さらに言うと、実はガソリン税暫定税率廃止のための財源候補として、金融課税の強化が検討されている。まだ詳細は不明だが、株や債券などの売却益や配当金への課税率を引き上げると予想される。

 高市政権を支持する若年層の特徴を筆者が推測するに、クルマ離れが進む一方、金融投資には積極的だ。ガソリン価格を下げるための財源を、金融資産に求める方向性について、若年層は支持するのだろうか?(新NISAの非課税枠はあるが……)