社会的な「成功レール」の崩壊、どんどん不確実になる未来、SNSにあふれる他人の「キラキラ」…。そんな中で、自分の「やりたいこと」がわからず戸惑う人が、世代を問わず増えています。本連載は、『「やりたいこと」はなくてもいい。』(ダイヤモンド社刊)の著者・しずかみちこさんが、やりたいことを無理に探さなくても、日々が充実し、迷いがなくなり、自分らしい「道」が自然に見えてくる方法を紹介します。
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幼い頃の夢はありますか?
拙著『「やりたいこと」はなくてもいい』ではまず、自分の強みを見つけるために「世界を広げること」を提案しています。その中で、読者の方から多くの反響があったのが「幼い自分に頼ろう」という項目です。
簡単に言うと、「幼い頃の夢でまだ挑戦していないものがあったら、実際にやってみる」ということ。こうすることで自分の世界が広げられることがあるのです。
本に書いた私自身の幼い頃の夢は「ホールケーキを丸ごと食べる」「ドクターマーチンのブーツを買う」「野球をバックネット裏の席で見る」の3点。実際に、これらの夢はいずれも30代前半で叶えました。
なぜ、「幼い頃の夢」を叶えるのがいいのか?
小学生の頃の夢や憧れを、30歳過ぎても覚えているということは、明らかに脳が執着してるということだと思います。思い出したくても思い出せないことが山程あるというのに、20年以上も脳の片隅に「ケーキを丸ごと食べたい」と残っているなんて、私にとってよっぽどの大切なことだということ。
理性で考えると、太りそうだし胃もたれするし、やることに何もメリットは感じられないわけですから、もうこれは理性を超えた「執着」なのです。
自分にとって大切なことだから、脳が忘れないようにしているのかもしれません。もしくは、ただ満たされなかった幼心の疼きかもしれません。でも、いずれにせよ、長年経っても覚えているということは、その願いを叶えない限り、そこからは離れられないということなのです。
「世界を広げる」だけじゃないすごい効果
では、幼い頃の願いを叶えることで、どんな効果があるのか? 先にも書いた通りまず「世界を広げる効果」があります。
本書でも触れている通り、野球をバックネット裏で見ることで、野球という興行に対する新たな視点を持てるようになりましたし、マーチンのブーツを履いていたことで新たな人との繋がりができました。
しかし、実際にやってみると、それよりも更に大きな効果を自分自身に感じました。
それは、「あれっ、こんな感じか…」って思えること。
ホールケーキの例がわかりやすいと思うのですが、小さい頃の私は、ホールケーキは誕生日のような特別の時にしか食べられない「お金持ちの食べ物」で、自分には縁遠いものと思い込んでいました。
でも実際にはホールケーキは3000円くらいで買えます。小学生には大金でも、30歳の大人から見れば一回の飲み会よりも安かったりするわけです。
それを実際にやることで、ハードルが高いと思い込んでいたことが、案外そうでもないんだ、と体感することができたのです。頭で理解するのと、実際に身体で感じるのは大きな違いがあります。
そして、その小さな、でも数十年も抱えていたハードルを何度も超える経験をすることで、今まだ自分がハードルが高いと思っていることでも、実際はそうではないかもしれない、やればできるかもしれないと、挑戦へのハードル自体が下がってきたのです。
もちろん、「月に行きたい」といった、すぐには叶えられない憧れを叶えるのは難しいですが、大人の行動力で叶えることができるものなら、どんどん叶えちゃいましょう。
その積み重ねが、大きな挑戦へと向き合う勇気になっていくのです。
*本記事は、『「やりたいこと」はなくてもいい。 目標がなくても人生に迷わなくなる4つのステップ』(ダイヤモンド社刊)の著者しずかみちこさんのメルマガから抜粋・編集したものです。




