銀行「貸し出し急拡大」は日本の成長エンジンになるか、不動産偏重と預金の伸び減速が映す危うさPhoto:PIXTA

邦銀の貸し出しが拡大し、2025年10月の伸び率は銀行全体で前年同月比4.5%と高水準だ。都市銀行は貸出金利も上昇している。プロジェクトファイナンスやM&Aで攻勢を強めた結果といえる。一方で、貸出先は製造業より不動産などに偏り、預金の伸びは鈍い。この状態が続けば、銀行の資金調達コスト上昇や再編、資源配分のゆがみを招きかねず、日本経済の成長の足を引っ張りかねない。(ピクテ・ジャパン シニア・フェロー 大槻奈那)

拡大続く銀行貸し出し
2000年以降で最高の伸び率に

 足元で邦銀の貸し出しが拡大している。2025年10月時点の前年同月比の増加率(平均残高ベース)は、銀行全体で4.5%、都市銀行で5.0%と、リーマンショックやコロナ期といった特殊要因を除けば、2000年以降で最高水準の伸び率となっている(図表1参照)。

 特に注目すべきは都市銀行の動きだ。貸し出しの拡大が顕著なだけでなく、貸出金利もじわじわと上昇している(図表2参照)。足元では、元来中小企業向け貸し出しを多く抱える地方銀行や信用金庫の方が高いはずの貸出金利に、都市銀行が肉薄している。

 この背景には、期間が長く、相対的にリスクの高いプロジェクトファイナンスやM&A関連資金などへの積極的な取り組みがあると考えられる。

 銀行が一定のリスクを取り、貸し出しを拡大すること自体は、経済成長を後押しする要素となり得る。しかし、貸し出しの中身を詳しく見ると、必ずしも楽観できない側面も浮かび上がる。

 次ページでは、業種別の貸し出し動向を分析し、経済成長のエンジンとなり得るのかを検証する。