伊藤忠商事がジェネリック医薬品ビジネスに突如参入表明、第8カンパニーが主管する意味とは?“ポスト岡藤レース”にも影響かPhoto:Diamond
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 日本列島を覆った猛暑がやっと去り、秋の涼しさが感じられるようになった間隙を突くかのようにその急報は製薬業界を襲った。

 シルバーウィークの谷間である9月22日午後5時30分、持田製薬は適時開示で日医工などを傘下に擁する純粋持株会社アンドファーマに20%出資すると発表。同じく伊藤忠商事も同じ割合でアンドファーマに資本参加することを公表した。これにより、アンドファーマに全額出資していたジェイ・イー・エイチ(JEH)の持ち分は10月1日付で6割となり、残りを持田と伊藤忠で分け合う。

 日医工、共和薬品工業、そして武田テバファーマと武田テバ薬品を前身とするT’sファーマを抱えるアンドファーマは後発品業界再編の有力な軸と見做され、これから合流するのはどこかと耳目を集めていた。

 ただ、持田製薬を挙げる楽屋雀は皆無に近く、まして「伊藤忠と組んで出資するとは想像もつかなかった」(業界関係者)と意表を突かれた向きが専ら。地味なオーナー企業との印象が強かっただけにその乾坤一擲には意外感が漂う。

 22日の持田の発表資料によると、(1)バイオシミラー(BS)の開発・事業化、(2)後発品既存品目での製造連携も見据えた医薬品事業の収益力強化ーーを目的としている。

 前者に関しては日医工がバイオシミラーを手がけているため、その相乗効果の発揮を見込む。後者については業界内で問題となっている「少量多品種」の解決に向け、持田を含めた4社で重複している品目を1社の製造ラインに寄せることで効率化を図ろうとする狙いが透けて見える。

 一方で業界が驚いたのが伊藤忠によるアンドファーマへの出資だ。持田同様、取得価額は162億円。大手総合商社の上位を形成する同社にとって「はした金」(経済紙記者)かもしれない。だが、同社の製薬への出資は初めてと見られ、伊藤忠史上では大きな一歩になったといっても差し支えない。

 そもそも総合商社にとって製薬ほど相性の悪い業界はないというのが通説。「投資の不確実性が高すぎる」「リターンまでの期間が長い」といったことが理由に挙げられ、過去を遡っても製薬関連への投資は非常に少ない。故に、丸紅が4月、住友ファーマから中国・アジア事業を買収すると発表した時の衝撃が大きかったのだ。

 そうしたなかでの伊藤忠だ。同社もまた競合同様、製薬関連への取り組みは多くないが、石井敬太社長の出身母体エネルギー・化学品カンパニーと、情報・金融カンパニーの両事業部門が軸となる。

 エネルギー・化学品カンパニーは、子会社である伊藤忠ケミカルフロンティア(ICF)による原薬・中間体の輸入が中心。国内後発品メーカー向けに納入しており、品質を確保するため、ラボを自前で持つなど一定の投資を行っている。さらに同社ではオピオイド系鎮痛剤の代替となる貼付剤も米国に輸出している。

 もうひとつが医薬品開発支援機関(CRO)への出資。臨床試験の受託を手がけるエイツーヘルスケアを子会社化しており、24年3月には米ボストン(マサチューセッツ州)に支店を開設した。また、医療機器の専門商社センチュリーメディカルにも出資している。ともに情報・金融カンパニーが所管している。

 だが、今回注目したいのはアンドファーマへの出資がこの両カンパニーではなく、第8カンパニーが主管していることなのである。