リーダーはどのように学び、成長するのか。マクドナルドCEOやゴールドマン・サックス元会長などの経営者、スポーツ界のトップ選手、ウォーレン・バフェットに代表される専門分野のエキスパートなど世界の成功者たちの知恵をまとめた実践の書が『Learning 知性あるリーダーは学び続ける』だ。
本書の監訳者であり、一橋大学特任教授、経営学者の楠木建氏は「世界のリーダーの叡智と経験に満ちた、いまだからこそ読むべき“座右の書”だ」と述べている。本記事では、楠木氏にインタビューを実施。AI時代に学ぶ理由と、学びが深まる読書のコツについて聞いた。(取材・構成/小川晶子)

【一橋大学教授が教える】成功する人がやっている「仕事の成果が爆上がりする読書術」とは?Photo: Adobe Stock

仕事の効率を上げた先にあるもの

――AIによって仕事の効率化が進みつつある現代において、あらためて学ぶ理由とはどのようなものでしょうか? 仕事の効率が良くなれば、それでいいという考え方もあると思うのですが。

楠木建氏(以下、楠木):一つのポイントだと思うのは、効率が良くなったぶんの時間を何に使うのか?ということです。

AIのおかげで何かの作業にかかる時間が減ったとします。
空いた時間を何に使いますか?

――確かにそうですね。効率化を求めるわりには、空いた時間に何をしたいのかあまり考えていなかったかもしれません。

楠木:これはもう、人生についての考え方次第ですよね。仕事が効率よく終わるようになったら、友だちと雑談したり、家でYouTubeを見たりしたいというのも、それはそれで尊い人生です。

『Learning 知性あるリーダーは学び続ける』の著者であるデヴィッド・ノヴァク氏は、世界最大級の巨大レストランチェーンであるヤム・ブランズのCEOだった人で、ペプシコーラ、ケンタッキーフライドチキン、ピザハットの再生にも尽力してきました。
彼にとっては、仕事でより高いパフォーマンスを出せる経営者であることが非常に大事です。
彼のように、「仕事で成果を出す」という目的がある場合、空いた時間を学びに投じるのは当然だと思います。良いアウトプットをしたいなら、学び続ける必要があります

このように、人生の目的をどこに置くかによって答えは変わります。
どちらが優れているということもありません。

インプットでは終わらせない、読書のコツ

――楠木さんご自身は、学びに関して意識している点はありますか?

楠木:僕の場合は考えることそれ自体が仕事なので、ビジネスパーソンの参考にならないかもしれません。
読書は重要な学びの活動の一つであるわけですが、僕は読書で知識を得ようとは思っていないんです
本から「考える材料」を得ているという感じです。
思考能力が仕事上の重要なファクターなので、絶対にインプットで終わらせず、常に考えます。野球選手の走り込みみたいなものですね。

本を読みながら、「これは要するにどういうことか」「この著者はなぜこう考えたのか」など、考えるきっかけもらうようにしています。

仕事で成果を出すために本を読むなら、必ず自分のアウトプットにつなげる意識で読むといいのではないでしょうか。

――本書には各章の最後に読者が自分のことを考えるための質問が載っていますから、読むだけで終わらせず、アウトプットにつなげられそうですね。

楠木:そうですね。本にあるのは著者から「これを考えてみたらどうですか」という提案です。それに限らず、自分で問いを立てることができると思います。

「なぜこの人はこういう決断をして、これをしなかったのだろうか。自分だったらどうしただろうか」というように常に考えながら読むのです。そうやって考えながら読むことが、一番価値があると思っています

(※この記事は『Leaerning 知性あるリーダーは学び続ける』を元にした書き下ろしです。)