今、全国で人身被害をもたらしているクマというのは、本来の生息地である山から下りてきて市街地周辺に生息し、住宅街などに繰り返し出没する、いわゆる「アーバンベア」と呼ばれる新しい時代のクマだからだ。
アーバンベアの特徴は人間を恐れることもなく、人間の気配を警戒することもなく、自ら人間と距離をつめて、襲いかかる点にある。
わかりやすいのは今年7月、北海道福島町で新聞配達をしていた52歳の男性を襲ったヒグマだ。
これは典型的なアーバンベアで、実は襲撃の4日前からこの男性の前に頻繁にあらわれていた。男性は母親に「ナイフを持っていった方がいいかな?」と不安を口にしていたという。町役場から700メートルのところで、発見された男性の遺体は全身に爪痕、腹部を中心に噛まれていた(7月21日 UHB)。
つまり、人間を恐れて警戒するどころか、人間を「獲物」として狙いを定めていた可能性が高いのだ。なぜそのように推測されるのかというと、実はこのクマ、4年前にも人を殺しているからだ。2021年7月、福島町内で農作業中だった77歳の女性がクマに襲われて亡くなっているのだが、現場に残った体毛のDNA分析から同じクマだと判明したのである。
これがアーバンベアの恐ろしさだ。市街地周辺で生息しながら、人間を恐れるどころか、「動きがのろくて、狩りやすい標的」と認識してしまっている。だから発見次第、「駆除」をしなくてはいけないのだ。
「それは極端な例だろ」というクマ擁護派の方もいらっしゃるだろうが、被害数を見ると、アーバンベアが増えているというのは紛れもない事実のようだ。
「朝日新聞」(10月26日)が集計したところ、今年4月から10月22日までにクマにより死傷した172人の中で、なんと66%に達する114人が市街地などの人里で被害にあっていた。全体の死傷者数も、過去最多ペースで増え続けているという。
実際に、各地でアーバンベアによる凶行としか思えない凄惨な事件が続いている。
宮城県大崎市では庭先でリードに繋がれていた体長50センチの柴犬がクマに襲われた。クマは柴犬をくわえて近くの森に消えた。







