「イエス」に変える技術その1
「相手の好きなこと」

なぜDJポリスの伝え方が、群衆を動かしたのか?<br />そこに使われていた「伝え方のレシピ」。佐々木圭一(ささき・けいいち)
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師 上智大学大学院を卒業後、97年広告会社に入社。後に伝説のクリエーター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。日本人初、米国の広告賞One Show Designでゴールド賞を獲得(Mr.Children)。アジア初、6カ国歌姫プロジェクト(アジエンス)。カンヌ国際クリエイティブアワードでシルバー賞他計3つ獲得、AdFestでゴールド賞2つ獲得、など国内外51のアワードを獲得。郷ひろみ・Chemistryの作詞家としてアルバム・オリコン1位を2度獲得。twitter:@keiichisasaki
Photo by Tomohito Ishigo

 これは、あなたの求めるお願いをストレートに言うのではなく、「相手の好きなこと」から言うことで相手のメリットに変える技術です。そう言い換えることによって「ノー」と言われそうなことも「イエス」に変わる可能性がぐんと上がります。

 今回で言うなら、「サポーターのみなさんは12番目の選手でもあります」というポイント。それはサポーターにとってみたら最も嬉しいことのひとつ。選手であるからにはルールとマナーを守るのは当たり前。「ルールとマナーを守ってほしい」というおまわりさんのお願いを、サポーターの好きなことである「12番目の選手である」という相手の好きなことからつくったので、受け入れにくいお願いが見事に叶えられたのでした。

 こちらは、「ノー」を「イエス」に変える7つの切り口のうちの1つ「相手の好きなこと」です。

DJポリスの使った技術は、
誰にでも使える

 DJポリスは、もともと伝え方の天才だったのかもしれません。伝え方とは、もともとその人が持っている才能と一般的に思われています。長年生きて来た経験により口からこぼれるものだと思われています。

 ですがこのように技術として知っていれば、天才でなくても誰でも使うことができるのです。

 この技術は大勢の人たちを動かす以外にも、多く使うことができます。たとえば、好きな人がいるとします。でもその人は、あなたに少しも興味がないとき何と言ってデートに誘いますか?思ったままに

 「デートしてください」

 と言っても可能性が低いですよね。ですが「相手の好きなこと」を使って誘えば、可能性がぐんと上がります。例えば相手が「イタリア料理が好き」「はじめてのことが好き」であるなら

 「驚くほど旨いパスタの店があるのだけど、行かない?」

 と言えば、自分としてはデートのお誘いなのですが、相手からすると自分の好きなことへのオファーなので「イエス」と言われやすくなるわけです。もちろん100%ではありません。ですがDJポリスが実際に人を動かしたように、人が動きたくなる「伝え方のレシピ」があるのです。