「反グローバリズム」が
「反リベラル」とセットに

小泉:トランプ支持者の間では「反グローバリズム」という自己認識が非常に強いと思うんですよ。これまでの世の中の良くないことはすべて、グローバリズムの名の下に他の国々が米国に押しつけてきたことが原因だという言説です。

 したがって、世界から引いていくトランプは正しいという話になるのですが、そういう話が、ディープステート論のようなトンデモな陰謀論と合体しています。

 トランプ支持層にはトンデモっぽい陰謀論信者みたいな層もいるのですが、世界の他の国々からタカられてきたのだという被害者意識の部分が、普通の人々にも刺さるのだと思います。当然、ロシアから見ても、欧州から手を引く米国はいいということになりますから、そういう言説は煽動することになります。

黒井:米国は他国からずっとタカられてきたという言説が、トランプ自身の「カネで損させられるのは敗者だ」という感覚と結びついています。そして、その被害者意識の反グローバリズムに、反リベラルがシンクロします。人権的な物言いが米国に損をさせているという敵意です。

 USAID(米国国際開発局)の縮小の話もそうしたリベラルに対する敵意があってこそで、反リベラルの理屈が反グローバリズムとセットで扱われ、「悪いのはリベラルな考えだ。だからリベラルは全否定せよ」となる。移民排斥のようなわかりやすい問題にマッチしていますし、それは民主党への敵意を煽動する際にも使えます。

小泉:ヴァンス(編集部注/ジェームズ・デイヴィッド・ヴァンス。50代アメリカ副大統領)などは福祉そのものを否定しています。甘やかすと人はダメになるというような意識で、究極のリバタリアンです。

 彼はリベラリストではないリバタリアンなんですよね。強者は強者のままでいるべきという意識が、トランプ政権のメンバーに共通しているように感じます。

ロシアが工作した怪情報をソースに
アメリカの政策が決定されている?

黒井:第1次トランプ政権でも、初期のジェームス・マティス国防長官やハーバート・マクマスター国家安全保障担当大統領補佐官がいた頃はともかく、中期以降はおべっかだけの側近で周囲を固めて、迷走しています。