
「もう引き返せないが、いいね」
「ダマサレナイ」とヘブンは錦織にクレーム。トキは「ブシムスメチガウ」と言う。
「シジミウリ」だと。その証拠に腕も足も太い。これは「シゾクチガウ」と言い張る。
トキは全然太くないので、どんだけ細い人を目指しているのかヘブンの気持ちにピンと来ないがまあ仕方ない。こんなとき、タエ(北川景子)がいれば、このひとこそ士族の娘だと感動するのではないだろうか。ただし、タエは家事いっさいできない。そう、士族の娘は嗜みが備わっているとヘブンは思っているが、ほんまもんの士族の娘は家事などしないのだ。
錦織は慌ててトキはヘブンが会ったことのある「ラストサムライ〈勘右衛門(小日向文世)〉の孫」だとフォロー。たちまちヘブンの顔が変わる。
ヘブン「スバラシイ。アノサムライノ」
錦織「いまはしじみ売りですが」
なんだかサムライとしじみ売りとにものすごく差をつけた、偏見に満ち満ちた会話である。百姓の娘は女中に雇わない考えといい、いろいろと偏見の持ち主な気がする。
ヘブンはトキに20円を渡す。トキは覚悟して受け取る。「もう引き返せないが、いいね」と錦織が念押ししていると、ウメ(野内まる)が朝食を持ってくる。
トキに気づいたときのウメの目つきに、驚きをはじめとして自分が断った代わりに……という申し訳なさとか、いろいろな感情が混ざって見える。
トキはまるで生贄(いけにえ)のようだ。例の人柱のような。ふつうに生きていたら、あるとき急にさせられるこわいものにトキが選ばれてしまった。いや自分が選択したのだが……。
その日は面接(?)だけで終了。出勤は明日から。トキは帰宅するとフミ(池脇千鶴)に花田旅館で働くことにしたとうそを言う。ヘブンが人気で旅館を訪れる人が後を絶たないから「ぜひぜひぜひぜひ」と請われたと理由をつけて。その言い方に少し芝居がかっていて、フミは不審に感じつつも、そこまで深ぼらない。
だが、ヘブン先生にはあんまりかかわらないほうがいいと忠告するのは母親の勘であろうか。「おじじさまが」と勘右衛門が外国人をよく思っていないからと言うが、ほんとうにそれだけなのか……。







