『起業家』がベストセラーとなっているサイバーエージェント社長藤田晋氏と『伝え方が9割』佐々木圭一氏の対談の後半です。「伝え方も多角化、複雑化している。経営者はスピーチが苦手でも他の方法に頼れるようになった。例えば、ブログに書けばいい」と藤田さん。言葉とその技術について、語り合ってもらいました。(取材・構成/上阪徹 撮影/小原孝博)

技術者は、わざわざややこしく言っている

藤田晋(ふじた・すすむ) 株式会社サイバーエージェント代表取締役社長。1973年福井県生まれ。97年、青山学院大学卒業後、人材会社の株式会社インテリジェンスに入社。翌98年に株式会社サイバーエージェントを設立、代表取締役社長に就任。2000年に史上最年少(当時)の26歳で東証マザーズ上場。著書に『渋谷ではたらく社長の告白』『藤田晋の成長論』、共著に『憂鬱でなければ、仕事じゃない』『人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない』など。
渋谷ではたらく社長のアメブロ
http://ameblo.jp/shibuya/

藤田 さすが伝え方の本だけあって、『伝え方が9割』というのは、タイトルがうまいなぁと思いました。僕も『起業家』のランキングを気にして見ていたときに、いつも順位のそばにあって気になっていたんですよね。

佐々木 ありがとうございます。ブログにも書いていただいて、感動しました。

藤田 特に技術者は、伝え方のようなものを軽視している印象が僕にはあったんです。むしろ、わざわざややこしく言っている気がしていて。本を読んでみて、これはちょっとでも伝え方を意識すれば、まったく変わると改めて思ったんですよね。だいぶ損をしている技術者がいるな、と。

佐々木 そうなんですよね。大学時代、僕も理系で論文を書いていたりしましたが、どれだけ難しいそうに書くかがポイントだったりしましたよね(笑)。

藤田 インテリ層も伝え方には弱いですよね。ブログを書いてもらうと、すごくわかりやすいです。太字や文字の大きさなどを、いろいろ駆使してわかりやすく伝えようとする人と、ダァーっとテキストを流し込むだけで「そんなの見る人がちゃんと読めばいい」とばかりに書いちゃう人がいますよね。受け手に対する配慮というか、デリカシーがまるで違う。

佐々木 ネットが出てくるまでは、それでも良かったと思うんです。でも、今はダァーと流し込まれただけのテキストは読みたくないし、難しい言葉が並んでいたら途中で読むのをやめてしまいますよね。他にも、わかりやすくて楽しい情報は山のようにあるわけですから。
 もしかしたら、伝え方講座のようなものを作って、技術者の人は受けてみるといいんじゃないでしょうか。

藤田 ぜひ作ってください。実際、ネットでは便利がものが作られているんですが、実はほとんど埋もれているんです。フェイスブックとか、食べログとか、当たったものばかりが取りざたされますけど、いいものは他にもたくさんあるんです。それが、伝わらずに埋もれている。その意味では、埋もれない伝え方の技術を持てたとするなら、かなり価値が高くなると思います。