『伝え方が9割』はみんなに読ませようとしたんです
佐々木 藤田さんが、社員の人たちに何かを伝えるときに、特に気をつけていることはありますか。
藤田 僕はブログが一番得意なので、みんなが疑問に思いそうなこととか、ちゃんと背景を説明しないといけないときは、ブログに書いています。ブログなので、率直に書かないとみんなは読んでくれないですけどね。
佐々木 あとは、繰り返しおっしゃる、ということでしょうか。
藤田 ブログは意外に強烈で、みんなパーソナルにしっかり読むのでいいですね。繰り返し声を嗄らして言わなければいけない時代に比べれば、だいぶラクになったとは思っています。でも、繰り返しは必要です。
佐々木 声だけだと残らないけれど、ブログだと残る、というのもありますね。
藤田 サイバーエージェントは、半年に一回、社員総会で全社スローガンを発表しているんです。半年間だけのスローガンです。今は「熱狂」です。社内でものすごく流行っているんですよ。「熱狂して行きます」とか「熱狂が足りないんじゃないか」とか。
ヒットしたら普及するんですが、コケると半年経って誰も覚えていないこともあります(笑)。毎回、斬新なもの、社員の予想を裏切るものをチョイスしています。
佐々木 言葉って、流通すると強いですからね。
藤田 経営者として、言葉のチョイスは大事にしているほうだと思います。ネーミングにもうるさいですし。だから、『伝え方が9割』はみんなに読ませようとしたんです(笑)。
福利厚生で大ヒットしたものに「2駅ルール」があるんですが、これも言葉から始まりました。勤務地が渋谷であれば、2駅以内に住むと家賃補助が月額3万円出る、というものなんですが、別に2駅でなければいけない必然性はなかったんです。3駅でも良かったし、半径何キロ、という決め方でも良かった。でも、「2駅ルール」のほうが、なんとなく言葉として言いやすいし、印象に残るじゃないですか。
他にも「休んでファイブ」というのがあって、2年勤めると、3年目以降毎年5日間休める、という制度なんですが、これも言葉を先に決めました。
佐々木 面白いですね。言葉を先に決めて、ルールにしてしまうんですね。
藤田 福利厚生って、なんか損しているような印象がないですか。使われていないのに、お金を取られてる、みたいな。保養所とか施設とか、眠っている気がして。
だから、眠らせないようにするために、面白いネーミングで使える福利厚生を増やしていくことにしたんです。それこそ、「いい名前が決まらなかったら、やらない」くらいに。
佐々木 実際に使われなかったら、制度があっても意味ないですもんね。
藤田 しかも人数が増えてくると、普及させるのに1回1回言ってまわるわけにはいかないので、言葉の力を借りているんです。