車椅子の鄭氏が「転がり、はい上がるように飛行機に乗った」という投稿は大きな反響を呼び、SNS上で瞬く間に拡散された。微博の関連トピック閲覧数は、たった1日で3億回を突破した。

 これを受け、深セン空港はその日の夜に迅速に対応し、2回連続で公式に謝罪した。そして、航空会社と連携してバリアフリー対応の改善や障害者支援体制の見直しを進めると表明した。

世論の急激な反転

 鄭智化氏は台湾出身の人気歌手で、現在64歳。2歳の時に小児麻痺で歩行不能となり、以来車いす生活が続いている。90年代に彼が作曲作詞した数々の歌は台湾・中国の両岸で流行し、一世を風靡した。

鄭智化氏のヒット曲「水手」

 鄭氏は障害を乗り越えた「励ましの象徴」でもあることから、世論は一斉に鄭氏に同情し、深セン空港を厳しく批判した。

 しかしその翌日、空港側が監視カメラで撮られた当時の映像を鄭氏の許可なしで、2倍速でSNSに流した。その結果、再び論争が勃発し、世論が反転した。今度は、鄭氏に矛先が向かい、非難が集中した。

 動画では、鄭氏が搭乗口に到着した際、昇降機とドアの間に確かに段差があるものの、スタッフが鄭氏を支え、杖をつきながら搭乗している様子が確認されたからだ。

 これを見たネットユーザーは、「鄭智化のいう『転がりはい上がる』ほどではない」と指摘したほか、「障害者だからって、何?自分が特別な存在だとでも思っているのか?」「人に迷惑をかけたり、助けてもらったりしているのだから、感謝の気持ちを持たないといけないだろう。人を非難する立場じゃない」といった厳しい声が大半を占めた。