なぜなら、笑顔は、自分の表情の中で最大公約数の“いい顔”であり、相手に安心感を与えるからです。初対面の場でスムーズに“ダマ”に入り、周囲との関係を築ける人は、組織でも能力を発揮しやすいのです。
「おはようございます」「はじめまして」といった挨拶を明るく交わす。無理のない範囲で開放的な雰囲気を保ち、服装も清潔感を意識して笑顔を絶やさない。それだけの心がけで印象は格段に変わります。
相手がこちらに好感を持ちやすくなるだけでなく、自分の気持ちも前向きになります。第一印象を良くする努力は、他人のためだけでなく、自分自身の思考や行動を軽やかにする効果もあるのです。
同期・同級生・ママ友――同じ出発点の絆
もう一つのポイントは、「同期・同級生・ママ友」の大切さです。
私は最近、60代後半から70代の人たちに取材を重ね、『定年後、その後』(プレジデント社)を上梓しました。定年を迎えた多くの人々に話を聞いて気づいたのは、彼らが「会社の同期」「学校時代の同級生」「ママ友(女性の場合)」といった、“同じ時期にスタートを切った仲間”とのつながりをよく語ることです。
例えば、同期入社の仲間とは、先輩や後輩に比べて胸襟を開き、率直に話せる関係にあり、定年後もその人間関係が続くといいます。ただ、その理由を尋ねてもうまく説明できない人が多い。
おそらく「同じスタートラインに立った」という共通体験が、人と人を結びつけやすくしているのでしょう。
学校の同級生や、子どもが同じクラスに通っていたという共通項も、絆を強める大きな要素です。かつての戦友における「同期の桜」も、その延長線上にあります。
そう考えると、現役を終えた後に、学生時代の友人やかつての同期、ママ友とのつながりをもう一度呼び戻すのも一法です。もちろん、すべての人と仲良くする必要はありません。気の合う仲間との関係を大切にすればいいのです。
私自身、50代で社会人大学院に入学したとき、年齢も職業も異なる同級生(仲間たち)と出会い、遠慮なく何でも語り合える関係を築くことができました。新しい人間関係を作るには、“同じ出発点”を共有する場に身を置くことが、最も効果的だと感じています。
学生たちが言うように、人が“ダマ”を作るのは、防衛本能の一種でしょう。仲間がいれば安心できる――その心理はごく自然なものです。見方を変えれば、初対面の場でうまく“ダマ”に入れる人ほど、組織の中では安定できるということです。
「顔」や「印象」は、人間関係の入口で大きな力を持っています。だからこそ、自分の“いい顔”や雰囲気をどう作るかを、日頃から意識しておきましょう。それは無理に笑顔を作ることではなく、相手を受け入れる姿勢をオープンに示しておくことです。
初対面のわずかな時間で伝わるのは、言葉よりも表情や物腰です。柔らかいまなざしと穏やかな表情――それが、新しい関係を築く第一歩になります。
(構成/フリーライター 友清 哲)







