ブードゥー人形を手に「早く呪いたいな」
「きっとですが、先生の大切な方だからです」
「私にも大切なかたがいますが、そういうことはなるべく心のなかにしまっておきたく」
それは第39回でヘブンが言った「思い出はべらべらと話すもんじゃありません」と同じ趣旨だ。
ヘブンはトキの話す日本語がなんとなくわかったと「正解」と言う。
第39回のトキもヘブンが錦織に話した英語は聞き取れていなかったはず。ふたりは心で通じあっていた。
ヘブンはしじみさん(トキ)に優勝賞品としてブードゥー人形を渡す。
願いを叶えたり、呪ったりする人形だ。トキは日本のわら人形に似たそれを喜び、「なんで喜んでるんだ 変わった女中さんだな」と生徒たちは奇妙に思う。
「早く呪いたいな」というトキの一言がトキらしい。
そして、1カ月が過ぎ、次の1カ月もトキは働けることになった。首がつながったのだ。
「ヨロシク」とカエルの絵のついた給料袋? を渡すヘブン。トキはお辞儀の絵と「こちらこそ」と書く。
「ねがいます」
「ねがいます」
向き合ってお辞儀するふたり。なんだかお見合いみたいである。言葉でなく心が通じたふたりだから、相性はいいはずだ。
スキップしながら帰るトキ。まだうまくできないが「まあええか」とにこにこ。代わりに風鈴の音が軽やかに鳴っている。
言葉が通じないなかで心が通じていく様を、イラストやスキップを通して、やさしくすてきに描いた1週間だった。
ちなみに、ヘブンのモデルの小泉八雲は食堂を開いたことがある。小泉八雲記念館のサイトによると、1878年、28歳のとき、ニューオーリンズで、「5セントの小さな食堂『不景気屋』を開業するが、相棒に売上金を持ち逃げされ、わずか20日間で閉店」とある。すぐ閉店しそうな名前である。なんでこんな名前にしたのだろう。相当なブラックユーモアの持ち主と思われる。









