関係性が浅いメンバーには
まず「模範」を見せよう

「まだ関係性が浅いメンバーに、緊急の案件を任せなければならない」

 多くのリーダーは、信頼関係が十分に築けていないメンバーに緊急案件を任せなければならない状況に悩みます。

 このような場面では、メンバーとの関係構築が途上である一方で、案件の納期は刻一刻と迫っているという、二重のプレッシャーに直面するのです。

 リーダーの多くは、「どこまで任せるべきか」「もし失敗されたらどうなるか」という不安と向き合いながら、日々判断を迫られているのが実情です。

 そんなときに有効な任せ方があります。

 それは、リーダーが初動を実演する任せ方です。

 たとえば、まず手順書・期日入り進捗表のフォーマットをつくり、共有します。

 その際、「メールよりもチャットのほうが円滑にコミュニケーションできた」など、効率的に進めるための経験も共有してあげるといいでしょう。

 こういった「範を示すアプローチ」は、社会心理学者ロバート・チャルディーニが提唱する「影響力の原理」とも整合し、効果があります。

 チャルディーニの理論によれば、人は不確実な状況に直面した際、信頼できる他者の行動を重要な判断材料として活用する傾向があります。

 特に緊急時は、信頼性が高い事例の有無が成否を左右することが多くの研究で示されています。

リーダーが模範を見せる際の
3つのステップ

 このアプローチには、3つのステップがあります。

 手法自体はシンプルなので、実践のイメージが湧きやすいように「効果的なひと言」と「効果を示した図」も合わせて紹介していきます。

 実践するときを想像しながら読み進めてみてください。

1、リーダーが率先して行動する

「まず、私がやってみます」

 このひと言で、メンバーの緊張は和らぎます。

2、行動の意図を簡潔に説明する

「このように考えて、このように動いています」

 重要なのは、完璧な説明ではなく、考え方の共有です。

3、メンバーの行動を促す

「では、同じような状況で、あなたなりに試してみてください」

 この「あなたなりに」という言葉が、主体性を引き出すポイントです。

図表:リーダーがチームを照らす光になると、メンバーが動きやすい同書より転載 拡大画像表示