この理論を裏づける興味深い事例として、ある新規プロジェクトリーダーがこう話してくれました。

 新たに配属された3名のメンバーと、重要案件に取り組むとき、私は大きなジレンマに直面しました。

 時間的な制約がある中、信頼関係もまだ十分には築けていない状況で、夜も眠れないほどの不安を感じていたのです。

 そこで私は、まず自分が率先して行動を起こし、思考プロセスと具体的な行動をセットにして、明確に示すアプローチを選択しました。

 最初は不安でしたが、メンバーの反応が徐々に変化していくのを実感できました。

 このアプローチがもたらした成果は、予想をはるかに超えるものでした。

 メンバーたちは、リーダーの行動を単に模倣するだけではなく、その根底にある思考プロセスや判断基準までを迅速に吸収し、さらに独自の創意工夫を加えていくという、予想以上の成長を見せたのです。

リーダーが率先して動くことで
自然と信頼関係が構築される

 そこで、リーダーが仕事を抱え込んで残業沼にハマっていたり、メンバーへの指導に膨大な時間を費やしたりしているのに組織が成長しないような「うまくいっていない組織」17チーム118名に、このアプローチを適用したところ、次の結果を得られました。

・顧客への対応速度が23%向上
・トラブル対応処理時間が37%減少
・チーム状況が改善したと回答した人は全体の76%

 さらに興味深いのは、このアプローチを取ったチームでは、その後のメンバーの成長速度も向上した点です。行動を見せることで、単なる業務の手順だけでなく、リーダーの判断基準や価値観までもが自然とチームに伝わっていったのです。

 四国にある金融機関の支店長は、成功体験をこう語ります。

 クレーム対応で、新人と2人きりという状況でした。

 そこで、最初の対応は私が行い、その場で「なぜこう対応したのか」を説明。

 その後の類似案件では、彼女が自信を持って対応できるようになっていました。

 むしろ、私のアプローチを進化させ、よりよい対応を見せてくれたのです。