「息子が生まれたら一緒にみよう」と録りためていた、ドタバタ劇系アニメの「トム&ジェリー」。どうしても視覚的な要素が多く、言葉でフォローしてもどうしても面白さが伝わらないのでデータを消去しました。このとき親指で消去ボタンを押しながら感じた悲しさは今でも覚えています。

 3つの障害がある息子と生きる。これは完全に社会から浮いた生活です。マジョリティ(たとえば日本社会でいうと、日本国籍を持っていて、男性で、健常者で、シスジェンダーでヘテロセクシャルな人)を前提につくられてきた社会は、息子にとってはあまりにアウェイだからです。

 目が見えないから、自宅から駅まで1人で歩行するのもままならない(一部点字ブロックはありますがない場所もまだ多い)。1人でスーパーで買い物も難しい。聴覚過敏もあるので、バイクの走行音などが苦手で、大きな通りでは常に耳をふさぎながら歩く(イヤーマフは嫌がります)。そうすると、本人だけでなく僕や妻もセットで、家族全員社会から浮いている状態になりました。まったく社会と気が合わないんですよ、これが。

「弱さ」とされるものは
「発明の母」になりえる

 ただただ困り顔で浮いている状態が、3ヵ月ほど続きました。だけど時間が経つにつれ、少しずつですが状況を飲み込めるようになり、立ち止まっていても何も始まらない!と、障害のある当事者やご家族、関係者に会いにいくようになりました。その数は、最終的には約200人にもなりました。

「息子は目が見えないのですが、たとえば色という概念はどうやって教えればいいんですか」「どんな仕事につける可能性がありますか」「そもそも日本社会で、障害があって生活するとはどんなご苦労がありますか」「今後挑戦してみたいことはありますか」

 必死です。鬼の形相です。とにかく何か、息子の子育てのヒントや光になるような情報を手に入れたい。妻にグッドニュースとして伝えたい。そんな想いでした。